~趣味の世界~
フジミ1/700特シリーズの駆逐艦涼風・海風です。


フジミ特の白露型は新しいキットなのですがどれも2隻セットになっていて、
特-55 白露・春雨 (対空兵装強化時)
特-78 村雨・夕立 (開戦時)
特-81 時雨・五月雨 (最終時)
特-59 涼風・海風 (対空兵装強化時)
特SP-15 山風・江風 (開戦時)
という風になっています。
開戦時と対空兵装強化時の違いは主に艦橋前の機銃台の有無で、対空兵装強化時と最終時の違いは12.7cm単装砲塔が機銃台に代わり、前マストに22号と13号電探の有無。海風・涼風と山風・江風は改白露型なので艦橋のパーツが違うハズ。
数を集めたい人には一見お得に見えますが、艦の側面に書かれる名前のデカールなどが付属しないので単純に同じものが2つ出来上がるだけ、というちょっと嫌らしいキット構成になっています。

白露型のキットは1970年代からあるタミヤの白露と春雨しかありませんでしたが、ここ数年内にピットロードとフジミから発売され一気に数が揃いました。1隻だけでいいという人は同型が単純にデカール違いだけになっているピットロードのものを買うのが良いでしょう。ただし夕立・春雨・五月雨の分のデカールは付属していないようです。


海風は白露型駆逐艦の7番艦、改白露型の1番艦です。白露型駆逐艦は前型の初春型が小型の船体に重武装、という構成が友鶴事件により危険であるとされ改修により甲板上の艤装の構成が見直され軽量化された後の形を踏襲しており、白露型となるにあたって魚雷発射管が4連装に変わっています。第4艦隊事件の影響により改設計をされた改白露型では艦橋の形状が変更され、後の型である朝潮型・陽炎型と同形状となりました。海風は1937年に竣工後、後に続く同型の山風、江風(かわかぜ)、涼風の竣工を待って第24駆逐隊を編成します。太平洋戦争が始まると空母や戦艦などの護衛として付き添ったり、輸送などの任務をこなしてゆきます。そして海風は1944年2月にトラック島付近にて米潜水艦ガードフィッシュの雷撃を受け沈没します。

涼風は白露型駆逐艦の10番艦、改白露型の4番艦で、軍縮条約脱退により次の朝潮からは一回り大きな船体となる朝潮型駆逐艦として建造される事となります。涼風は海風の3か月後に竣工し同型4艦と共に第24駆逐隊を編成し、海風と同様に空母や戦艦の護衛、輸送などの任務に就いていました。そして1944年1月にポナペ島付近にて米潜水艦スキップジャックの雷撃を受け沈没しました。


2艦セットなので結構なボリュームに見えます。




最近のキットらしく細かくパーツ点数も多いので説明書は長めとなりますが、塗装指示はあまり、というかかなり不親切。リノリウム色部分はモールドで大体見当がつきますが煙突の黒塗装は箱絵を参考に。


今年に入ってからコストダウンなのかバラストが省略されるようになっています。ある程度重さが無いと嫌という人には残念ですが、作業中や落下時の被害範囲などの点では軽い方が安心。軽いとちょっとした揺れで棚から落ちやすくなる、というのもありますが、艦プラはできればケースに入れて展示したいもの。


パーツ全図。機銃のランナー以外は全て2枚ずつあります。デカールは旗のみ。


1艦分だとこれだけ。といっても駆逐艦のキットでこれだけパーツ点数があるのもそうありません。


成型色のせいか一見ピットロードのキットみたいな雰囲気ですが、あちらほど繊細ではありません。機銃などはフジミ特の特徴が強いです。



船体パーツは乾舷が低く、艦底パーツは側面に出ないパーツ構成なので全体が薄く見えます。


船首楼部分の甲板は別パーツですが、若干のすり合わせを要します。パーツの合わせ面の船体側の角が立ちすぎている印象なのでカッターで角を削り落としてやると、上写真奥側くらいにはピッタリしてきます。


パーツがそこそこ多いのでスプレー塗装で手間を省き・・・と思ったら残りものの塗料では足りなかった・・・あーもうamazonでスプレー3個くらい注文してくれるわ。


その間船体側は筆塗りでやってしまいます。まずはリノリウム色として43ウッドブラウンを。


そして軍艦色2を。説明書の塗装指示では下面をココアブラウンで塗るようになっていますが、どうせ側面に回らないし置いておく分には見えない部分なので塗りません。乾舷の低さが気になってプラ板を艦底に貼り重ねてかさ上げをした場合はかさ上げをした分の側面に艦底色を塗ると良いでしょう。


スプレー塗料が届いたので早速塗装。四方八方から吹き付けてもまだ成型色の白い部分がそこかしこに見える印象で、完璧にやろうとすると塗膜が厚くなるかもしれません。ある程度までに留めて、組みながら白く残ってる部分は筆塗りでレタッチしてやればよし。


パーツ点数は多いですがフジミにしては割と組みやすい方かもしれません。ピン状のパーツを取り付ける部分には穴があるので、そういう部分がほとんど台のようになっているピットロードよりは、多少・・・(こちらにもそういう部分が台になっていて、しかもピン状パーツの接着面が丸いパーツなどが多少あります・・・)


パーツの合わせがギチギチにきつい部分が多少あり、機銃台を後部煙突にかぶせる所、またその下の次発装填装置も取り付ける時きつい感じがします。マストは前も後ろも2本を合わせる面が何も面取りされていないので仕上がりの見栄えがイマイチに感じるかも。一方でボートダビットなどは他キットよりもかなり取り付けやすく感じました。


ただ、あまりにも全く同じものが2つ出来上がるだけすぎるので名前を書いておきましょうか。罫線代わりにマスキングテープでおおよその位置決めをして面相筆フリーハンド。名前はカタカナゴシック体で右から。戦隊番号の24も艦首の左右に書きます。


艦尾は平仮名教科書体で。こうした記名は戦時には塗りつぶされていましたが、これが無いと見分けが付かねえんです・・・




ウォッシングをして完成。無難に出来過ぎていてややスペクタクルが足りない。



キット自体の出来は新しいキットなだけの事はあります。



素組でもそこそこみつしり感があります。


各部を観察。主砲塔は50口径三年式12.7cm連装砲塔(C型砲塔)。艦橋は改白露型の特徴である朝潮型や陽炎型と同形状のもの。艦橋の前には機銃台があり、その上には九六式25mm連装機銃が置かれています。


煙突と交互に2基置かれている魚雷発射管は白露型で初装備された九二式61cm4連装発射管。それぞれの後方には箱状の次発装填装置が置かれています。後部煙突の前には白露型ではまず毘式40mm単装機銃が2基、改白露型では保式13mm連装機銃が2基置かれていましたが、後にどちらも九六式25mm3連装機銃2基に載せ換えられています。


後部の砲塔は前方側の2番砲塔のみ単装(単装B型)となっており、その後方の3番砲塔は1番砲塔と同じく連装砲塔。その後ろには2組の爆雷投射機(Y砲)と装填台があり、艦尾には爆雷投下軌条があります。


右舷側。2番砲塔は最終的には改装で撤去され3連装機銃の台に変更されます。ピットロードの海風は対空兵装強化時とありますがここを機銃台にできるようになっており、フジミ特だと機銃台になっているのは時雨・五月雨(最終時)だけです。


改装による装備の変遷は中々難しいもので、白露型の単装砲塔が機銃台に変わったのはマリアナ沖海戦(1944年6月)の前だとは分かってもそこから前のどの時期かイマイチ調べてもよくわかりません。海風も涼風も割とそういう装備状態が中途半端な時期の艦。


前部マストには何も装備されていませんが、13号と22号電探は1943年頃から装備が始まっています。


タミヤの白露と。この白露は装備的には開戦時でしょうか?艦橋の形状の差異も同じもののメーカーの解釈違いだけのようにも見えます・・・


更にピットロードの朝潮も。確かに艦橋の形はかなり似ています。というか単装砲塔の辺り以外ほとんど同じような構成に見えます。


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フジミの白露型は白露型では最新のキットですが、夕立や五月雨を作りたい人以外はあまり積極的に選ぶ理由が無いかもしれません。商品展開的にもピットロードのものが合理的でユーザー側からもうれしい反面、フジミのそれは真逆です。1個買えば白露型のどの艦どの時代にもできるのが理想ですが、そこまでいかなくてもせめて艦名デカールを付けるか、1艦ずつにしてほしいものです。キットの出来はそこそこ悪くないだけに非常に勿体ない。




フジミ1/700特シリーズの空母蒼龍です。


久々のマゾい特シリーズ。箱サイズは前回の隼鷹とほぼ同じ。


蒼龍は軍縮条約によって残された保有枠の残り12630tを埋めるべく建造された中型の正規空母。1937年に竣工し、1939年には拡大改良型である飛龍と共に第2航空戦隊に配属されます。
太平洋戦争では開幕となる真珠湾攻撃から参加し、並行して行われていたウェーク島攻略へも真珠湾攻撃の直後に支援として参加。続くオーストラリア空襲やセイロン沖海戦へと参加し、太平洋戦争の序盤戦で戦果を挙げてゆきます。
しかし1942年6月のミッドウェー海戦では事前にミッドウェーを攻める事が漏れており、民衆がみんな知っているという有様。蒼龍は多数の空母と共に参加するも、手ぐすね引いて待っていた基地防衛隊により苦戦を強いられる事となります。
そして米空母ヨークタウンから発進した十数機のSBDドーントレスの爆撃により格納庫内で火災発生、誘爆と電源喪失から消火も叶わず総員退艦、乗員が駆逐艦磯風・浜風に移乗すると大爆発を起こし、艦尾から沈没してゆきました。


特シリーズといったらこうです。山盛りのパーツ群。容赦ありません。




説明書はまず縦長の大きいものが1枚。やはり取り付けた後の状態が不明な点が多く、別紙参照と書かれていながら別紙には反対側しか書かれていなかったりとイマイチ不親切。ただタラップ(小さい階段パーツ)の取り付けはどう付けるか書かれていて改善はされています(取り付けてみたら説明書と違う長さが合わないというのはお約束)。


もう1枚は小さめで主にパーツ図と外装の大まかな塗装指示。側面は左舷側だけであり右舷側が分からなくて困る事が数点あります。まあ特なんてマゾいキットを買うなら他に資料も持ってんだろ、って事かしら。


最後の1枚、説明書内でバラストを組み込んでいるものの、バラストは付属しません。という補足。前回の隼鷹で使わなかったバラストがそのまま使えそうでしたが、あちら以上に持つ時に重量があると危険なキットなので無い方が良いでしょうね。



主要パーツ群。全長のある艦なので船体や飛行甲板のパーツがとにかくデカイ。2枚ずつあるランナーは種類が1枚にまとめられているのでさほど煩雑に感じるものではありません。ただし工程ごとにパーツがまとまってたりはせず、細かいパーツが集合しているD・H・L・Mあたりのランナーはとっかえひっかえになるので重ねておかずに並べておいた方が良いです。


透明パーツは艦載機3種3枚と探照灯パーツ。


デカールは飛行甲板の白線がメイン。エレベーター上に貼るものだけはまとまっていてクリア部分が多めですが他はクリア部分がほとんどなく、白線を1本1本チマチマと貼らなければならないものの仕上がりはキレイになるはずです。



パーツが多いなら塗装はスプレー塗装をすると手間を減らせます。前回の隼鷹で使いすぎたのかこんなもんなのか、船体と飛行甲板に吹いたら尽きてしまったのでもう1本、しかし買っていたのは軍艦色2じゃなく佐世保海軍工廠標準色!いやネット注文したらさ、これが在庫ありで軍艦色2が入荷待ちだったんだよ・・・


というわけで船体と飛行甲板以外はやや濃い青味掛かった色になってしまいます。
帝国海軍の軍艦色は大まかにしか定義されておらず、各工廠で「ウチではこうこうこれこれの比率だ文句は言わせんぞ!」という感じで、東の方が薄く西の方が濃い傾向の色になっているのです。なので西の端になる佐世保工廠は一番濃い色。呉工廠は中間で、横須賀工廠はやや明るい色。ただし呉と横須賀の間にある舞鶴だけは横須賀より明るい色になります。
もっとも、ウチのように最後に大雑把なウォッシングをする場合、元の色より暗くなるので元の色を塗る段階で軍艦色に白を混ぜるなどして先に明るめにしておく、という方法もあります。
しかし撮影状況で明るくなったり暗くなったり青くなったり黄色くなったりするし、イメージや好みというのもあり、好き好きにやったら良いと思うのですよ。


船体を組み上げます。船体左右間には梁を説明書通りに選択して差し込みます。格納庫の前端や後端のパーツは上面がツライチになるまでキッチリ差し込み、それでも合わない時は上面がツライチになるよう削ります、そうしないと飛行甲板がピッタリ取りついてくれません。フジミ特シリーズの空母は他社に較べ飛行甲板の取り付けで苦労する事が多いです・・・


仮組みは入念に。この時点では「まあこんなもんだろう」と適当にしておいたら、後でズレできてピッタリいかなかったりします。ただこの蒼龍はあまり苦労はしない方かも。


マスキングをして木甲板部分を44タンで塗ります。モールドが浅くて塗膜を厚くしちゃうと埋まりそう。できればスプレーで。筆塗りなら多少ムラが残ってでも薄く。


毎回どうも木らしく無い・・・と思っていたので試しにエナメルフラットブラウンを薄めて面相筆で前後方向に木目を描くようにウォッシング。ちっとは木らしくなったかな?木甲板というのは木の種類、上空から見た場合と間近で見た場合、見た時の天気、新しい木何十年も雨ざらしになってる木とそれぞれ違いがあり正解よりも好みでやってしまうと良いでしょう。


デカールを貼ります。白線を貼るエレベーターなどのパーツは裏からセロテープ留めして飛行甲板パーツに当てておき、白線パーツを貼ってゆきます。前々回の祥鳳のデカールと同様に貼りやすい中々良いデカールです。


船体に飛行甲板を接着。押さえてないとめくれてくるので前後を輪ゴムで、中間をセロテープで留めて乾燥待ち。


艦橋→左舷側→右舷側とパーツをチマチマ取り付けてゆきます。このキットで最もツライ工程。何でここまで細分化するの・・・


あらかた取り付け終えたところ。細かいにも程があると文句をたれつつも、やはり苦労は後の笑い話。完成後はみつしりしたパーツの集合体にうっとりできます。エッチングパーツ?死ぬわ!


艦載機を組もうとしたのですが、これがまたいやらしい難物。キャノピーが別パーツなのはさすがにお節介では・・・


零戦の足パーツを飛ばしてしまったのでブン投げて99艦爆1機だけでやめます。これは固定脚で脚パーツが大きいので作業性は他に付属する零戦や97艦攻より良好。尾輪とかマジ・・・どっちが前か後ろかすらわからん細かさだし。




ウォッシングして完成。この長い甲板に艦爆1機だけだと寂しいな・・・



細長いスマートな船体と飛行甲板。



飛行甲板の高さより上は小さな島型艦橋のためあっさりしていますが側面はフジミ特シリーズらしい高密度。



艦首の上、飛行甲板前端には九六式25mm連装機銃が3基並んでいます。キットは真珠湾攻撃時の装備で、蒼龍自体も大戦序盤までの艦なので機銃は連装がメインで3連装は置かれていません。


1番エレベーター付近。40口径八九式12.7cm連装高角砲が1基、連装機銃がその後方に3基並んでいます。


2番エレベーター付近。ここにも連装機銃が3基、その後方に12.7cm連装高角砲があります。壁面にデコボコした構造物が目立ちますが、蒼龍は格納庫の容積を稼ぐため機関の吸気経路を内蔵せず外付けにしているためです。


3番エレベーター~艦尾。もう1基12.7cm連装高角砲があります。航空機の搭載数は常用57機・保用18機で、こう見えて祥鳳型(27+3機)や飛鷹型(48+10機)のような軽空母と較べるとかなりの搭載数を持ちます。もっとも正規空母では赤城(66+25)や加賀(72+18)に較べたらやはり中型空母となります。


艦尾乾舷には内火艇が置かれています。


所狭しという印象。


右舷側は艦尾から2基の連装機銃と、その前方に防盾付きの12.7cm連装高角砲があります。


その前方の3基の連装機銃も防盾付きとなっています。祥鳳でも右舷側後半の機銃や高角砲が防盾付きとなっていましたが、煙突の排煙避けのためでしょうか?煙突が艦橋上にある隼鷹はそうなっていません。


斜め下へ曲げられた煙突2本の前には小さな島型艦橋があります。艦の規模の割には駆逐艦の艦橋と同程度のサイズで、煙突を避けているため位置も前寄りに存在します。


時代的にまだ電探などは装備されていません。むしろ蒼龍が沈んだミッドウェー海戦では索敵の不備に泣いた事もありこれ以降一気に電探の装備が進みます。


艦橋より前の右舷側には12.7cm連装高角砲が2基並びます。


飛行甲板を上空から。左側が艦首方向です。


太平洋戦争序盤の主力艦載機は零式艦上戦闘機・九九式艦上爆撃機・九七式艦上攻撃機で、蒼龍にはそれぞれ18機ずつ搭載されていました。
九九式艦上爆撃機。日本海軍では急降下爆撃時の急加速に備えダイブブレーキの装備や、そこからの引き起こしによる高Gに耐える運動性を持つ機体を爆撃機と分類し、できないものは攻撃機に分類していました。(一方で攻撃機は魚雷による雷撃を主任務とする関係上海面スレスレを飛行する低空での飛行安定性が求められました)
航空機の黎明期において翼端失速に対処できる翼型とされた楕円翼(葉っぱのような形の主翼、現在では翼端方向へ直線的にすぼまるテーパー翼で十分とされ廃れています)、固定式の主脚、垂直尾翼付け根から前に伸びているヒレなど、外見的な特徴が多いので比較的他と見分けやすい機体です。



隼鷹と。隼鷹も大柄な空母ですが長さ方向は蒼龍の方が長いです。


一応隼鷹も就役直後の身でミッドウェー海戦には行っていたそうなのですが、完全に代わりの艦となってしまいました。


祥鳳と。航空機搭載数が倍も違う軽空母なのでかなり大きさに差があります。といっても長さ方向以外は高さも幅もあまり変わりません。


祥鳳はミッドウェー海戦の前の珊瑚海海戦で沈んでいます。1隻沈んで悲しんでたら直後にもっとでかい主力連中が4隻まとめて沈んじゃった!


鳳翔と龍驤と。2/3くらいしかありません。でも赤城は蒼龍より2周りくらい長いのです・・・



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フジミの特はいつもこうだ!組んでる最中はフジミへの恨み言が出るレベルなのですが、完成してみればそれらの事は笑い話に変わり、満足度は非常に高いけどもう二度と組みたくねぇ!でも・・・また買っちゃう。
蒼龍のキットはフジミの特以外にもアオシマから出ていますが、こちらも良キットだそうです。ただアオシマ製はフジミより手を出しやすいのか同じ艦のキットだとフジミが残っててアオシマが品薄、という事がよくあります。軽巡はフジミとアオシマだったら何とかしてアオシマのを手に入れて欲しいですが、この蒼龍は根気が多少あるなら選んで良いものです。


タミヤ1/700ウォーターラインシリーズの空母隼鷹です。


箱は前回・前々回の祥鳳や熊野と同じ長さで厚みが1.5倍くらい。


隼鷹は飛鷹型航空母艦に属し、姉妹艦に飛鷹があります。飛鷹型航空母艦は前回の祥鳳と同様に軍縮条約回避のため平時はその他の艦船として建造し、いざ戦時となれば空母に改装する目的で建造された艦です。ただし祥鳳が軍属の給油艦として建造が始められたのに対し、隼鷹は国が戦時には徴用するという条件で補助金を出して日本郵船により「橿原丸(かしはらまる)」として建造が開始されました。橿原丸は大型の貨客船で、いわゆる豪華客船となる船でしたが、1939年に起工、1940年には情勢の悪化から空母への改装が開始されます。竣工は開戦後の1942年5月。直後となる6月のミッドウェー海戦では4隻の正規空母が失われたため、その後は代わりの貴重な航空戦力として各地を転戦します。1944年以降は戦局の悪化から搭載する航空機が尽き、輸送艦代わりの任務ばかりになってしまいます。1944年12月にはマニラへの輸送任務からの帰途、長崎の女島付近にて米潜水艦シーデビルとレッドフィッシュの雷撃により大破、命からがら佐世保へ帰投後は修理も思うように進まず航行不能状態のまま終戦を迎えます。


ボリュームはありますが古いキットなので構成はシンプルにまとめられています。説明書は2枚ありますが一方は英語版。


説明書は縦長の1枚。元々付いてる折り目でたたむと読みづらいので項の境目で3つ折りに折り直すと作業中読みやすいでしょう。1994年に作り直されている説明書ですが、塗装指示は飛行甲板の下になる部分などが不足気味。付属の艦載機の塗装指示については全く無いので別途資料が必要です(ググれば十分ですが・・・)。


1枚ピラ紙が付属。>PS<と書いてあるランナー以外は伸ばしランナーに使うな、というもの。キットにはPSのランナーしか無いので特に気にする必要はありません。ただ自動車のキットとかだとたまにライターで炙って伸ばしたら伸びずにブチッと千切れるものとかありますね。ガンプラによく入っているABS樹脂やポリキャップなんかのランナーは伸ばしランナーには使えません。



主要パーツ群。でかいので机に全部並べられないので写真2枚。ランナー1枚が巨大なのでパーツを切り取ろうとして振り回して組み上げ中のキットにぶつけたりしないように注意しましょう。見ての通り大きいもののパーツ数はそれほど多くはありません。


静模の大型艦用ディテールアップパーツが2枚付属しますが使わなくても完成させられます。というか置き換えるべき主要パーツのディテールがほぼ同等レベルの質なので今回は不要となります。タミヤのキットではよくある事です。


1973年のキットです。今更驚きませんが、艦底パーツの下面に毛筆体で「隼鷹」とモールドされているジジ臭さに年式の古さを感じます・・・



早速手始めに船体と艦底パーツを接着しますが、艦尾あたりなどは多少合いが悪くなっているので適宜に擦り合わせてやります。


接着後、重しをしているところ。


今回は大まかな軍艦色2の塗装をスプレー塗料で行いました。住宅事情などでこれが出来ない人もいるでしょうが、やはり筆でサカサカ塗るより手間が大幅に省力できます。大きいキットほど効果が高いでしょう。


艦底色で側面のみを塗りました。こんなデカイの下面全部塗ってられませんし。


飛行甲板はマスキングして44タンで塗ります。前方の曲面はマスキングしづらかったのでフリーハンドで。ここは塗膜が厚くなると木甲板のモールドが薄いため埋まってしまい真っ平になってしまうのでできればここもスプレー塗装でやった方がきれいになるでしょう。


パーツを取り付けてゆきます。作業性は良好でタミヤのキットは組みやすさを本当に大昔からよく考えてると感心します・・・バラストは2枚付属しますが取り付けると船体が重くなりすぎて持ち上げる際に持ったところが破損する危険があるので取り付けない方が良い気がします。


さてこのキット、デカールは付属しませんので飛行甲板の白線なども自分で塗らなければなりません。とはいえモールドは刻まれているのでそれに合わせてマスキングするだけでOK。恐れる事はありません。


生乾きの内にサッとテープを引っぺがします。アレスティングワイヤー(横方向に走る着艦索)の辺りでモールドが高くなっていてそこで横に漏れるのは仕方無いのでまたタンでレタッチしてやります。


2か所矢印様の白線がありますが、これは1本づつマスキングしては塗り、乾燥後またマスキングしては塗り、とやるのが安全。


軍艦色2で細かい所をチマチマと。余力のある人は飛行甲板後端の着艦標識(赤白の縞模様)に挑戦しても良いでしょう。
ところで箱絵だと艦全体が緑色ですが、これは最終仕様での迷彩塗装であり、艦の側面には明るい緑ベースに濃い緑で輸送艦の艦影を模した迷彩が描かれていたり、甲板も瑞鳳のような迷彩柄だったようです。今回の塗装のように普通の色をしているのは姉妹艦の飛鷹共々1943年頃まででしょうか?(飛鷹も1943年後半には防火のため木甲板が剥がされるなどしてやや様相が変化していたようです。)


飛行甲板を接着する前にウォッシングをしておきます。飛行甲板の裏をフラットブラック、それ以外をジャーマングレーで大雑把にやってしまいます。エレベーターを下げた状態にする場合、説明書だと各段に艦載機を配置していますが、折角細かく塗った艦載機がほとんど見えなくなってしまうのも悲しいので特になにも置かずにしておきます。飛行甲板接着後は後部エレベーター内に物を落とさないように注意しましょう。


艦載機のランナーには静模や1994といった刻印があり、元々付いていたものではないようです。説明書中にも零戦・97艦攻・99艦爆・彗星とありますが、何か形が違います・・・


ググって形状を確認すると、1が流星、2が彩雲、3が零戦、4が天山、5が彗星のようです。車輪や搭載兵装などを軽くディテールアップしてやります。

※追記※
静模の1/700ウォーターライン日本艦載機後期型(516)と同じもののようです。そちらの内訳は1が流星改、2が彩雲、3が零戦52型、4が天山12型、5が彗星12型となっています。


塗装は上面を成型色のまま、下面をガルグレー、キャノピーを青、主翼前縁内側を黄、日の丸を赤、機首を黒、プロペラ軸を茶としました。


飛行甲板を接着後、重しをしているところ。


艦橋は飛行甲板周辺のパーツを配置。もうちょっと。




完成。大型艦ながら短期間で完成できました。



エレベーターは折角なので下げた状態にしました。上の方の白線をマスキングしている写真でもわかるように、もちろんエレベーターを上げた状態で組む事もできます。



目線を下して観察。ホントに軽空母?ってくらいデカくて迫力があります。


各部を観察。船体は豪華客船から改装しているためか艦首などかなり堂々とした形をしています。艦首の上に1基、飛行甲板先端の左右には2基ずつ4基の九六式25mm3連装機銃が装備されています。その後方に3個ずつ並んでいる箱状のものは12cm28連装噴進砲。直径12cmのロケット弾28発を一斉発射するロケットランチャーです。有効射程は1500mほどであり、無誘導のため多量に発射する飽和攻撃・・・というよりは派手な花火による威嚇程度のものだったようです。マリアナ沖海戦の後から伊勢型戦艦や航空母艦に搭載され始め、隼鷹には1944年の9月頃から装備されていたようです。


1番エレベーター付近。左舷側に2基、右舷側に1基の40口径八九式12.7cm連装砲が確認できます。キットでは再現されていませんが、単装機銃も多数配置されていたようです。


1・2番エレベーター間。左舷側には4基の3連装機銃が配置されています。


2番エレベーター付近。左舷側には1基の連装高角砲がありますが、その後方の台の上にも連装機銃が置かれていたのですが、キットでは何故か配置する指示がありません(連装機銃のパーツが1個余るので、多分本来ここの分なのでしょう)。エレベーターの左後方には21号電探が置かれています。


艦尾乾舷。両脇に内火艇、内側の1段掘り下がった部分に大発が置かれていますが、ここは上下が狭く大発はほとんど見えません。艦尾には増設された機銃台の上に3連装機銃が2基置かれています。


艦尾右舷側。3連装機銃が4基並んでいます。


右舷側艦橋付近。日本の軽空母では珍しいアイランド型艦橋。煙突は艦橋と一体化しており、艦橋の上から外側へ傾けて突き出しています。煙突の後方にあるマスト上には13号電探が取り付けられており、煙突の前方すぐの位置にも21号電探が配置されています。艦橋の後方側面に2基の連装高角砲、艦橋の直後に2基の3連装機銃。艦橋の外側壁面に1基の連装機銃、艦橋の前面と直前に2基の3連装機銃があります。


艦橋より前方右舷側。連装高角砲、墳進砲、3連装機銃2基の順に並んでいます。


甲板上の艦載機群。列の一番前の1機は艦上偵察機の彩雲。3座の高速偵察機で、この時代ではまだ珍しい偵察専用の艦上機です。1944年6月ごろから配備が始まりますが、この頃には戦局の悪化が著しく、実は艦載しての運用はされておらず専ら陸上基地から運用していました。


その後方6機のおなじみ零式艦上戦闘機。キットでは零戦のどの型かまでは書かれていませんが、何となく52型のつもりで。2機のみ増槽を装備した状態にしてあります。


更にその後方の4機は艦上爆撃機の彗星。水冷倒立V型12気筒エンジンである「アツタ」を搭載するため外国の機体のような流線型の機首を持つ小型の爆撃機です。翼下にハードポイントを持つ12型に仕立ててあります。大戦末期においては日本の工業力ではやや過ぎたものであった水冷エンジンはトラブルが絶えず、信頼性の高い空冷エンジンに換装した33型が開発されますが、こちらは主に陸上機として、また特攻機として用いられました。


その更に後ろの1機は艦上攻撃機の流星。大戦末期の艦上攻撃機ですが、名前が爆撃機系なのは攻撃機と爆撃機を兼任させるための機体として開発されたためです。胴体の側面からの中翼・逆ガル翼が特徴。流星改は流星の試作1号機が失敗作だったため改設計を施し製作された試作2号機とその量産型を流星改とする説、量産型である流星11型のうちエンジンを誉21型に換装した後期生産型を流星改とする説などがあり、あまりはっきりしていません。


列の最後尾の4機は艦上攻撃機の天山。97式艦攻の後継で配備は大戦後半となる1943年。大型高速の機体のため、低速小型の軽空母ではロケットブースターを用いて運用したりしていました。隼鷹は大型ですが速度は正規空母の30ノットには及ばない26ノットほどであったためこちらでもそうした運用がされていたかもしれません。


空母祥鳳と。艦の全長はあまり差が無いものの、飛行甲板は長さ・幅共にかなり差がある印象。


空母龍驤と。この辺りとではかなり全長の差がついてきます。


水面から飛行甲板までの高さには定評のある龍驤ですが隼鷹は更に高い位置に飛行甲板があります。


空母鳳翔と。戦艦と軽巡洋艦くらいの差があります。


軽空母ばかり4隻が揃いました。


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傑作キットの誉れ高いタミヤの隼鷹、古さは隠せないものの組みやすさ、見た目の水準はまだまだ現役を張れるものがあり、普通に薦められます。大きくて迫力もあるし、組む自体は難易度が低めなので残った余力を作りこむ事に費やせるのです。スキルアップにも良好な教材となります。惜しいのは姉妹艦の飛鷹が無い事でしょうか。隼鷹も短い戦中の現役期間の中でもいくつかの形態があり、改造によりそれらや飛鷹を再現するのも面白いでしょう。もちろん普通にサッと組んでも全然OKです。

ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの空母祥鳳です。

祥鳳は祥鳳型航空母艦に属し、姉妹艦に瑞鳳があります。軍縮条約により空母の保有数を制限されていたため回避策として平時は条約の制限を受けないタイプの艦として存在し、戦時には速やかに空母に改装するという手段を考案し、まず建造されたのが剣埼型給油艦でした。
剣埼(つるぎざき)型給油艦は1934年に剣埼と高崎が起工し、のち剣埼は潜水母艦(潜水艦に補給や乗員の慰労などを行う艦)に設計変更され、1939年に竣工しました。日本海軍の潜水母艦は当時前型である大鯨以外は小型であったため潜水艦隊には喜ばれたものの、国際情勢の悪化により早期に空母への改装が行われる事になります。折角の大型潜水母艦だった大鯨も空母龍鳳へと改装されてしまい、高崎は建造中のうちに空母瑞鳳へと改装されます。そして剣埼は空母祥鳳として1942年1月に就役し、いざ南洋へと出航します。
そして5月の珊瑚海海戦において米空母レキシントンとヨークタウンの航空隊の爆撃により沈没、太平洋戦争における最初の日本空母の喪失となってしまいました。


箱は前回の熊野と同サイズ。大きいですが厚みがありません。


箱横、祥鳳について。祥鳳を沈めたレキシントンはその翌日に翔鶴を大破に追い込みますが自らも大損害を被り雷撃処分、ヨークタウンも損傷を受け真珠湾に帰投後突貫修理を行いミッドウェー海戦へ参加するも空母飛龍の航空隊の爆撃により大破し転進、途上で潜水艦伊168によってとどめを刺されます。


こう重ねるとそこそこのボリュームに見えますが空母だけあって完成後が大きいのでパーツが大きいだけであり、どちらかといえば簡易な構成のキット。


説明書は1枚が4つ折りになっており、やや縦に大きめ。


キット自体がシンプルな構成であまり細かいパーツが無いため理解の難しいようなところはありません。ただ飛行甲板の下になる船体側の甲板に塗色が不明なところがあり、多少解釈を要する部分はあります。そういう部分は別途資料を用意するか、好き好きに塗ると良いでしょう。


主要パーツ群。パーツは細かいものが少なく、初心者向けに組みやすさ重視で作られているように感じます。バラストは付属しません。


静模の大型艦用ディテールアップパーツが1枚付属。ここにも必須パーツが含まれます。


デカール。瑞鳳と共通で半分しか使いません。



いざ組み始めますが、構成は水上戦闘艦の砲塔も艦橋も無いような感じ。


パーツ合わせも悪くなく、保持力まであるおかげで仮組みで持ち上げても崩れないしおおよその形が出来上がってしまいます。


ただ残念なのはキット自体が瑞鳳をベースに作られているのか、余計な穴が最初から開いているため説明書にもところどころ「埋めてください」と指示のある穴があります。その他、甲板の下の支持桁(飛行甲板の前後の下に立つ柱)も突起を切り取れと指示のある部分も多く、ちょっとスマートさに欠けます。穴埋めにはスピード一番な光硬化パテを使用しました。飛行甲板のモールドを埋めろという所は木甲板の凸モールドも細かく走っている所なのである程度潰れるのを覚悟する必要があるでしょう。


光硬化パテはこのチューブ1本で千円くらいとちょっとお高いですが、このように電球型蛍光灯の光を間近で当ててやれば1~2分ほどでカッチリ固まる速度がウリ。硬化しても表面にヌルッとしたものが付着しているのでふき取ってやれば、即座にサクサクと削りに入れます。


穴を埋めたら船体側はサッサと組んでしまいます。高角砲の台などのパーツもいくつか付けてしまっても可。


モールドは必要十分には付いているキットなのですが、艦橋の前の1段は何のモールドも無く真っ平でちょっと寂しい。箱絵なんかだと手すりに囲まれて色々配置されているように見えるので資料をくるなり独自判断なりで何かしら置いても良いかもしれませんね。


他の人の作例を見ると艦尾の乾舷部分には横方向に走るリノリウム押さえモールドと思しきものがあるのでここをリノリウム色に塗りました。格納庫後端の面には蜀の桟道のような通路がボンヤリとあるだけなので腕に自信のある人はエッチング手すりなどでデコレーションしてやると見栄えが良くなるかも。


飛行甲板は44タンで塗装。後でウォッシングするので多少ムラがあっても気にしない。


軍艦色2を一気に塗装。高角砲の台の下はやや筆が入りづらかったのでこの辺りは自己判断で。飛行甲板の裏側は指示がありませんが軍艦色2で全部塗ります。陰になる部分なので暗い色にするのも良し。


あらかたつけられるパーツは全部付けてしまっても良いでしょうが、飛行甲板を船体に接着するのは最後にとっておきましょうか。マストは邪魔になりやすいしウッカリ折る危険もあるので自己判断で。マストは航行時は立て、戦闘時は外側へ倒すそうです。飾る時の高さや幅などに影響するので好みでどちらかを選択します。


飛行甲板を接着すると筆が入らなくなるので船体側を一気にウォッシング。特に陰になる部分は濃いめに。


飛行甲板のデカールを貼ります。クリヤー部分がほとんど無くただ貼るだけで十分。フジミの特シリーズの空母に付くデカールのように一枚にまとまっておらず白線を一本一本貼る必要はあるものの、デカールが素直でモールドに良く馴染むのであまり苦にはなりません。良いデカールです。ただし馴染みが良い分マークソフターを付けた後でモタモタ修正しているとシワが寄りやすいので注意。


さて空母といったら艦載機を忘れてはなりませんが、このキットに付属の艦載機はちょっと懐かしい感じのブツで、脚とか。


ランナーに付いている艦載機は零式艦戦21型x5、彗星12型x3、99式艦爆11型x4、97式3号艦攻x4ですが説明書によるとこのうち零戦と97式艦攻だけ使用なのでそれらに絞ってちょっと手を加えてみることにしました。まずは端のランナーを切り取ってライターで炙り伸ばしランナーを作ります。


程よい太さにしたら切り出して削り、艦攻が腹に抱える魚雷と、輪切りにし切り詰めた脚先に車輪として取り付けました。


零戦の方は面倒臭くなったので2機だけ。増槽を腹に抱えています。尾輪は小っちゃすぎるのでそれっぽい形にしただけ。


塗装すればそれなりに見えるかな?




飛行甲板や艦載機をウォッシングして完成。



飛行甲板の先に艦首が突き出しているスタイルは龍驤が特徴的ですが、ちょっと引っ込んだ位置に艦橋があるこの形も軽空母によくあるスタイルのように思えます。このせいで艦橋からは水平方向にしか視界が無く、対空警戒が出来ないと不評だったのでほとんど同じ形をしている龍鳳では船体の横に艦橋を突き出させているとか。



目線を下して観察。この角度は空母の場合飛行甲板が見えませんが、その下にある各艦の個性を見やすい角度でもあります。ハリケーンバウ(艦首が飛行甲板と一体型となる形)だと壁しかなくてつまらないかもしれませんけど。


各部を観察。艦首は飛行甲板の先に突き出ており、これは凌波性を求めた形かと思われます。最終型の鳳翔は艦首よりも飛行甲板が前に突き出ていますが、波を飛行甲板の裏側にぶち当ててしまうせいか外洋航行に難があったと言われます。太平洋戦争までは空母の形状の最適解を探るべく色々な形が試されたためこの辺りの形状は数々のパターンがあります。戦後の空母の形を見るに艦首形状については艦首と飛行甲板の間を埋めて一体化してしまうハリケーンバウが一般的となりましたが、日本海軍の空母でハリケーンバウを採るのは装甲空母である大鳳のみです。


艦前半、1番エレベーター付近。エレベーターの左右舷には40口径八九式12.7cm連装高角砲が配置されています。マストの旗は他キットの紙シール旗を流用していますが、いつもの垂れ下がってるものではなく真っ直ぐになってる形のものは何かこう、お子様ランチのような・・・


艦後半、2番エレベーター付近。エレベーターの前方左右舷には九六式25mm3連装機銃が2基ずつ、後方左右舷には八九式12.7cm連装高角砲が置かれていますが、左舷は見慣れた剥き出しのタイプが、右舷側は防盾付きのタイプとなっています。


艦尾。乾舷(下の段の甲板)には内火艇が置かれています。


右舷側から。


同俯瞰。飛行甲板の左右に突き出している構造物は両舷着艦標識というもので、役割は・・・よくわかりません。高角砲の後ろにある上に突き出たものは煙突のようです。


艦後半2番エレベーター付近右舷側。こちら側の高角砲1基と機銃2基は防盾付きのものになっています。何故右舷側後半のものだけが?何ででしょうね。


艦前半右舷側。煙突と剥き出しタイプの連装高角砲があり、その間の壁面に吸気口とタラップが確認できます。機関は剣埼時代はディーゼル機関でしたがこれがどうにも調子が良くなくトラブル続きであったため空母改装時に陽炎型駆逐艦のものと同じ蒸気タービン機関(52000馬力)に換装しています。


艦前方をやや後方から。艦首形状同様に艦橋も試行錯誤が行われていた時期であり、大型の空母であれば多少重心が高くなっても飛行甲板上にアイランド型の艦橋を設置している例が多いですが、比較的小型の軽空母の場合は復元力に余裕が無いので飛行甲板先端直下やその後方など飛行甲板より下の位置にあるパターンがよくありました。また飛行甲板上にアイランド型艦橋を置くにしても右舷側だと煙突があるので前方に寄っていたり、煙突と一体化した巨大な艦橋を持っていたりしました。煙突を避けて左舷側に艦橋を置いたのは日本の空母赤城と飛龍のみです。


飛行甲板上の零式艦上戦闘機21型。誰でも知っている通称ゼロセンです。高い運動性により格闘戦を重視した艦上戦闘機であり、他国の戦闘機に比して非常に長い航続距離も持っていました。


飛行甲板上の九七式3号艦上攻撃機。1号と3号は中島飛行機製で後にそれぞれ十一型と十二型に改称されました。2号(六一型)は三菱製で脚が引き込みではなく固定脚となっているのが識別点。主に短魚雷を胴体下に搭載して海面スレスレを飛行し魚雷を投下、敵艦に雷撃を行う機体です。



空母龍驤と。祥鳳の飛行甲板長は龍驤の全長とほぼ同じ180m。祥鳳の全長は205mあり、これは妙高型重巡洋艦と大体同じくらい。


祥鳳がまだ剣埼として設計中はまず前型の大鯨とほぼ同型の予定だったものの友鶴事件により設計変更を行い構造を強化して起工に入り、更に建造中に第4艦隊事件の影響で設計変更を行っています。そのため工期が伸び伸びになり竣工時には軍縮条約が無効になっているとして、空母改装の準備を先にしておくべくエレベーターなどの装備をした結果給油艦としての能力が不十分となったため艦種を高速給油艦から潜水母艦へ変更したいきさつがあります。


空母鳳翔と。鳳翔は全長165m。


水上機母艦千代田と。千代田の全長は190mほどですが、空母への改装後は飛行甲板が180m、排水量も11190tと、祥鳳の11200tと同等の規模の空母となります。





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それほど古くないハズですがどこか古さを感じ、簡易にまとめられ組みやすいですがもうちょっと詳細でも良かったなぁ・・・という感じでイマイチぱっとしない印象のキットです。決して悪くは無いのですが、どうもこう褒めにくいというか・・・
姿のよく似ている龍鳳はフジミの特とピットロードがしのぎを削る詳細指向のキットなので対比としてそちらも興味のある人はチェックしてみるのも良いでしょう。



タミヤ1/700ウォーターラインシリーズの軽巡洋艦熊野です。

軽巡洋艦?軽巡洋艦です。
熊野は最上型重巡洋艦の4番艦。最上型は元々老朽化していた天龍型や球磨型軽巡洋艦の代わりとして計画され、軍縮条約の失効後を見据えて大柄な船体に新型の15.5cm砲を搭載する軽巡洋艦として竣工しました。先に竣工していた最上・三隈が第4艦隊事件により船体強度が不足しているという事でまだ建造中であった鈴谷・熊野は設計を変更され、最上・三隈とは船体構造の他機関などにも違いがあり、鈴谷・熊野は別に「改最上型」又は「鈴谷型」と分類される場合もあります。

熊野は1937年に竣工し、1939年には早くも主砲が20.3cmに換装され事実上の重巡洋艦となりますが、対外的にはこの主砲換装は伏せられており太平洋戦争開戦後も書類上では軽巡洋艦のままでした。(米軍が最上型の搭載砲が変化していた事に気付いたのは1942年のミッドウェー海戦だと言われています。)開戦後はマレー上陸作戦・バタビア沖海戦・ミッドウェー海戦などに参加後は鈴谷と共に各地を転戦し1944年10月のサマール沖海戦で米駆逐艦ジョンストンの雷撃を受け損傷後は修理しながら何とか本土帰還を目指すも、1か月の間に潜水艦の雷撃や爆撃、台風などに見舞われ最後はフィリピンはルソン島のサンタクルーズにて空母タイコンデロガ艦載機の雷撃により沈没してしまいます。


箱はサイズが大きいですが厚みが駆逐艦キットの箱程度。


箱横には熊野の要目や作例写真があります。反対側にはキットバリエーションである最上型の他の3隻が描かれています。タミヤの最上型は最上が航空巡洋艦状態、三隈(最上型)と鈴谷(改最上型)が重巡状態、そしてこの熊野が軽巡状態とそれぞれに違いがあります。


実質的な前型である妙高型や高雄型と同等のサイズの艦なのでボリュームはそれなりにありますが、フジミの特シリーズなどのように細分化せず、比較的組みやすいようにパーツ数を抑えたキットとなっています。


説明書は縦に長い1枚ですが折れば作業の邪魔にならないようにコンパクトにできます。読みやすいように折る位置を調整してやる必要はありますが・・・


裏面。組む順序は船体→各艤装→船体へ艤装を配置の順で、クセの無い組み順。


主要パーツ群。上写真の他にバラストと静模のディテールアップパーツが付属します。旗はデカールでも紙シールでも無い薄い紙で、ちょっと見慣れないタイプ。奥に立て掛けられているパーツがおそらく熊野独自のパーツなのでしょう、3連装砲塔が1パーツでまとめられているのに驚きます。


ディテールはタミヤらしいシャープなハイディテール。タミヤの最上型は2000年代に入ってからリニューアルされたもので比較的新しいキットですが、90年代前半頃に組んだ最上(旧キット?)もかなり満足な出来だったように記憶しています。


ランナーに2003 TAMIYAの文字。


静模の大型艦用ディテールアップパーツが付属しますが、説明書は省かれています。年代が新しいせいかここにも必須パーツが含まれます。



早速組み始めます。船体側面は左右分割ですがハセガワのように継ぎ目を横へ回らせたりはしていません。バラストは前後をプラパーツに差し込み、それを艦底パーツに接着するようになっています。構造上バラストがカタカタする事はありません。


魚雷発射管が載る台は一部反り返っていたので折らないように手曲げで修正してやる必要がありました。甲板パーツは先にポリキャップを仕込んでおきます。アオシマ高雄と違いポリキャップのはめ込み位置に無駄な空間が無いので砲塔を挿しておく必要はありません。あちら同様、ポリキャップは自動車キットのものと同じもので、非常に見慣れたパーツ。必要個数の倍ほど入っているので残りは何かに流用すると良いでしょう。


甲板パーツ前後を接着。船体側面左右パーツ同士を支え合う梁が無いので開く傾向にあり、甲板パーツを接着する時は側面から押さえながら。甲板との艦首の合わせ面も側面にあり凝っていますが後処理を要します。


甲板中央部は中にある魚雷発射管周辺を塗装してからになります。覗き込んでも見えないような位置に予備の魚雷がモールドされていたり、キッチリと隔壁があったりと凝っています。


仮組みしてみると3・4番砲塔の台座の後ろの隙間に筆が入りそうにないのでリノリウム色として43ウッドブラウンを塗り、砲塔台座と甲板中央部パーツの砲塔台座と対面になる位置を軍艦色2で先に塗装しておきます。


甲板中央部を接着。船体左右を抑えるようにテープを貼って乾燥待ち。


軍艦色2と艦底色を塗ります。


艤装を組み立てて配置してゆきます。難しいところは特に無いのですが煙突はグリルが抜けていて中が見えるので煙突内側もつや消し黒で塗っておくと良いでしょう。砲塔は1パーツなので塗装するだけ。20.3cm砲だと最上型は2番砲塔が干渉のため俯角をつけなければならないのですが、他の最上型はどうなのでしょう?


どんどん組みあがってゆきます。マストなども合わせが良く、細いのにしっかりと組めます。カタパルトは保持力がそこそこあるので差し込むだけでOK。


キットの砲塔と同じランナーには零式三座水上偵察機と零式水上観測機がありますが、この熊野は時代が1937~39なので静模のディテールアップパーツから九四式水上偵察機と九五式水上偵察機を使用します。塗色も戦中の緑/明灰緑色ではなく戦間期の銀/赤。小スケールキットではあまり銀色は使いたくないところなのですが、Mr.カラーの8シルバーなら粒子が細かくてギラギラせず雰囲気を損なわずに済むでしょうか。ガイアカラーの009ブライトシルバーでも可。


旗は切り抜いて左右を接着し、マストに瞬着を塗ってそこへ旗の端を当てて接着。紙シール旗の粘着が無く紙が薄くなったものと思えば良いでしょうか。旗はこの方式が一番好きかな・・・




エナメルジャーマングレーでウォッシングして完成。



甲板上の配置物が少な目でちょっと物足りないかな?でも時代が古い艦は大抵スカスカ気味だしこんなもんかな・・・



目線を下して観察。艦様は奇異な所がなくオーソドックス。



各部を観察。特徴でもある主砲は新開発の60口径三年式15.5cm砲を三連装にし砲塔に収めています。妙高型以降の重巡洋艦では20.3cm砲の配置を詰めるために2番砲塔を高い位置にしていますが最上型では搭載砲の全長が短く1・2番を並べても間隔が広がらないため3番砲塔を高い位置にしています。この配置だと俯角をつければ正面方向へ砲を9門向ける事ができますが、次型の利根型では20.3cm砲搭載前提のため再び2番を高い位置に戻しています。この15.5cm砲は性能的には好評だったため20.3cm砲へ換装するのを惜しまれたとも言われます。最上型から降ろされた15.5cm砲は改良型の3連装砲塔へ砲身のみ再利用され、軽巡洋艦大淀の主砲・大和型戦艦の副砲として搭載されました。


巨大な艦橋を持つ高雄型の次型としてはコンパクトな艦橋。これは元々船体は重巡クラスなれど艦種はあくまで軽巡であったからでしょうか。
煙突は最上・三隈とは機関が違う(大型缶10+小型缶2→大型缶10のみ)ため鈴谷・熊野では煙突が細くなっていますが、イマイチ見分けにくいので艦橋の前の吸気ダクトの有無の方が見分けやすいでしょう(最上・三隈には艦橋の前に吹雪型駆逐艦の吸気口のようなダクトがあります。)


後部マストの後ろの甲板にはフライングデッキがあり、その両舷にカタパルトが設置されています。その甲板の下には3連装魚雷発射管が4基内蔵されています。


艦尾には4・5番砲塔が高低に置かれている他はサッパリしています。


ミッドウェー海戦で三隈と衝突するなどして大破した最上は帰還後修理するついでにこの艦尾部分をフライングデッキと同じ高さにかさ上げして砲を撤去し艦後半を全てフライングデッキにする改装が施されました。大破した熊野が本土へ帰還出来ていた場合同様の改装が施されたかも?と妄想を巡らせるところですが、1944年末だし、無いだろうなあ・・・


フライングデッキ上には搭載数一杯な3機の水上機を置いています。キットでは水上機を載せる台車がパーツで用意されており、カタパルト上へ載せる際の滑走車も用意されているのでフライングデッキ上にただ置くだけとか、カタパルト上に直接接着だの無粋な配置にせずに済みます。ただし台車に載せる場合はフライングデッキ上のレールに沿わせるのが筋でしょうが、これが意外と上手く置けなかったりします・・・九四水偵は大きいのでレール上にどう置いても翼がどこかに干渉しがち。


煙突の左右舷には見慣れない砲塔がありますが、これはおなじみの40口径八九式12.7cm連装高角砲に防盾を装備したもの。重巡キットのこの位置の12.7cm連装高角砲は防盾無しだったり有りだったり付け根の白い幌がなかったりとマチマチです。
機銃は時代が古いためまだ竣工時の数のままで、艦橋前に13mm連装機銃2基、煙突の後ろ左右に九六式25mm連装機銃が4基という状態。最終的には更に25mm3連装機銃8基、単装18基(推定)が増備されます。


艦橋以前を後方から。前後マストには最終的に21号・22号・13号の電探が装備されますが、この段階ではまだどれも搭載されていません。



前型である高雄と。奥側が高雄、手前が熊野。艦後半の甲板の雰囲気は似ています。


前半はあまり似ていません。


艦中央部。高角砲の位置はフライングデッキの雰囲気は似ていますが、煙突の本数やその直後の構造物などはかなり違います。魚雷発射管の位置も高雄型よりも後方にあります。


甲板上にあまり物が載っていないスカスカな艦尾は似ています。



更に、次型である利根も。手前が利根。全然違います。


艦前半。艦首の形状が高雄型と比べ鋭角になっている点は利根型も共通していますが、その後ろは砲の配置から全く違います。小型化されたままの艦橋は多少似ているかな?


艦中央部。艦橋から煙突、機銃台までは雰囲気が似ているかも。


艦後半。さすがに利根の艦尾と似ている艦型は無いでしょう。ただし最上(改装後)だけは飛行機が載ってるって点では似てきます。




更に更に前型2つ。奥から衣笠(青葉型)、足柄(妙高型)、高雄、熊野、利根。


こう並べるともう似てるとか似てないとか・・・


でも利根以外はみんなスカスカな艦尾。


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タミヤの比較的新しいキットだけのことはあり組みやすくハイディテールですが、苦労が無さすぎて物足りないと感じる向きも多いかもしれません。ただしタミヤは古いものでもそうなので、むしろ新しい割にはあまり進化していない感じがしてしまいます。近年の他社の追随は激しいですが、作りやすさの点ではまだタミヤがトップだと感じます。
また上写真のように各型をコレクション的に集めるにはこれくらい楽な方が良いですが、恐ろしいのはそのバリエーション展開。各型どころか同型各艦も全て集めてしまいそうになる誘惑。これは恐ろしい事ですよ・・・

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