~趣味の世界~
ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの駆逐艦霞(かすみ)です。


ハセガワの朝潮型はウォーターラインシリーズ初期からある古いキットで、霞だけは2006年頃に対空兵装強化時を再現するパーツが追加されて発売されたもの。ピットロードからもっとマシな霞が出ているのでわざわざこっちを買う必要もなかったのですが、値段が倍も違うのと、これを買った時はまとめ買いをしたので安いのでいいやを思ってしまった事、昔小学生の頃にハセガワの峯雲(同じ朝潮型のバリエーションキット)を組んだ時の印象が良かったので思い出補正もありました。


霞は朝潮型駆逐艦の9番艦で、朝潮型の最後の艦です。軍縮条約により小型の船体に山盛り武装を、というコンセプトで建造された初春型は結局は安定化のために武装を減らし、改良型の白露型で再強化されたものの小型の船体ではそれ以上の発展性も望めなかったため、条約破棄後にあらためて十分な大きさの船体をベースにする方針に基づいて建造されたのが朝潮型駆逐艦です。朝潮型駆逐艦は艦隊型駆逐艦としては十分な性能を誇っていましたが、運用上不都合がみられた部分の改修(次発装填装置の位置など)や航続距離の延伸などの改良がなされ次型の陽炎型となります。
駆逐艦霞は1939年に竣工し、太平洋戦争開戦時は同型の「霰(あられ)」、陽炎型の「陽炎」「不知火」と共に第18駆逐隊を編成、真珠湾攻撃部隊の護衛として初戦から参加します。練度の高い隊でもあったので序盤から各地を転戦しますが、1942年7月にキスカ島へ水上機母艦千代田・特設運送船あるぜんちな丸の護衛として向かった際、連日の激務で疲労していたため休息をとっていたところを米潜水艦グロウラーの奇襲を受け、霰は沈没、霞・不知火は大破してしまい、この責任をとる形で当時霞に座乗していた駆逐隊司令は割腹自殺し、隊は解隊となります。霞は舞鶴で修理を受けた後はしばらくの間予備艦となり、1943年9月に第5艦隊第1水雷戦隊に編入、再び各地を転戦します。1944年に入り苦しい戦況の中で同行した損害艦の救助に奔走するエピソードが増え、第1水雷戦隊旗艦であった阿武隈が損傷した際に代わって旗艦を務めた後は度々旗艦を担う機会も多くなります。年末の礼号作戦においては参加艦艇のうちより大型で通信・旗艦設備の整っていた重巡洋艦足柄・軽巡洋艦大淀をさしおいて小回りの利く霞を旗艦とし、作戦を成功に導きます。1945年初頭の北号作戦では戦艦伊勢・日向を護衛しシンガポールから日本本土まで多くの物資を無傷で持ち帰り、日本海軍最後の作戦成功を飾りました。そしてその持ち帰った燃料をもって米占領下にあった沖縄を目指す天一号作戦に参加、坊の岬沖海戦において米航空機の攻撃により大破し、駆逐艦冬月に乗員を移乗後撃沈処分され沈没します。この時の冬月の艦長は1か月前まで霞の艦長をしていた人でした。


箱下面。リノリウム色は書かれていますが単装機銃の配置などは書かれていません。


開封。古いキットのため小さな箱に相応の内容となります。


説明書。ハセガワのウォーターラインシリーズの説明書は記述が大きめで読みやすくされているのが特徴的。ただし各所にある「埋めてください」はちょっと初心者には厳しいかも。パテを用いるよりは穴に接着剤を流して伸ばしランナーを突っ込んで埋めるのが簡単でしょうか。


主要パーツ群。新造された追加パーツは手前真ん中のランナーにある2つの機銃台パーツ。これだけがシャキッとしており、他のパーツはバリも多くダルンダルンです・・・


船体上面にはリノリウム押さえディテールがびっしり入っていますが、艦中央部のリノリウム色じゃない部分にも横方向に走るモールドが大量にあり、ここは鉄板モールドにしてほしかったところ。砲塔の軸は穴ではなく大きなダボが立っているので切り飛ばしてディテールアップパーツなどに置き換えると良いでしょう。


静模のディテールアップパーツ小型艦用が1枚付属。砲塔や魚雷発射管などは本体のパーツがグズグズなのでこちらに置き換えるのがベター。


船体は船体、バラスト、艦底の3パーツで超シンプル。


ただしやはりスッとは取り付きません・・・


船体側艦首付近の内側が出っ張っていてここを少し削ってやる必要があります。リューターで削りましたがカッターの方が早いかも。


接着剤を貼り合わせたスキマに流したらプレス!船体上面に突起が多く重しが置きにくく、重さが足りないので結局平らな板を艦底側に当てて輪ゴムでグルグル巻きにしてしまいます。輪ゴムは長期間プラスチックに触れていると癒着するのでその状態で何日も放置しないように注意。


砲塔や魚雷発射管の軸を切り飛ばし、何のモールドも無い船体側面に伸ばしランナーを貼って外舷電路っぽくします。舷窓もピンバイスで浅めに開けます。


ディテールアップパーツをそのまま使うのも物足りないので伸ばしランナーでリブを取り付けたり、前回の雪風のエッチングパーツの余りの水密扉も所々貼っておきました。


リノリウム色として43ウッドブラウンを塗装。つい船首楼の後の一段下がった部分まで塗ってしまいましたが、朝潮型は船首楼の上と船体後半だけを塗ります。


32軍艦色2で残りを塗装。艦底色も後でマスキングして塗っておきます。


パーツを取り付けてゆきます。基本的にキットの主要パーツを使用しますが、砲塔&魚雷発射管は言うまでも無く、連装&3連装機銃などもディテールアップパーツに置き換えます。次発装填装置を跨ぐスキッドビームはディテールが何も無く貧相なので前回のフジミ雪風で使用しなかったプラパーツを流用。ここだけディテールが濃くてちょっと浮き気味?


フジミ雪風の防弾板やボートダビット、デリックの他ピットロードの陽炎型で使用しなかった艦橋後部の電探室や単装機銃、ホースリールなどを流用して盛り付けてゆきます。子供だまし的ではありますが連装機銃のパーツやパーツの切れ端を加工して適当に配置する事でみつしり感を高めておきます。単装機銃の配置はピットロード版の霞の塗装指示がググれば割とすぐ見つかるので参考に。全部で8個。


デカールを貼りますが、傷んでいたのか砕けるので船体左右の名前は失敗、旗も上写真の後にウォッシングしていたら砕けてしまいました。艦尾の「みすか」の文字のみが霞と識別できる唯一の部分になってしまいました。艦橋の窓もデカール表現になっていますが、黒で塗装して窓枠は省略でも良いと思います。




エナメルフラットブラックとジャーマングレーでウォッシングして完成。



霞の場合「歴戦の猛者」っぽさが出るとよりそれっぽいでしょう。



ただ一度フジミの雪風みたいなのを見てしまうとどんなに頑張ってディテールアップしてもまだ足りない気がしてしまいます。どこまでやれるかは気力と根性次第。私は性格的にこれが精一杯かな・・・


各部を観察。主砲塔は50口径三年式12.7cm連装砲(C型砲塔)。その後方、艦橋の前には増設された機銃台の上に九六式25mm連装機銃が配置されています。艦橋後部のマストは22号電探が配置され、その処理のための電探室が艦橋後部に増設されています。


艦中央部。煙突と交互に4連装魚雷発射管が設置されています。1番魚雷発射管の次発装填装置は初春型・白露型と同様に2番煙突の方へV字に広がるような形で置かれていますが、この真下には機関室があるため誘爆の被害を減らす意図で陽炎型からは1番煙突の側へ配置し直されています。


艦後部。背負い式に高い位置に置かれていた2番砲塔を撤去して代わりにタンデム配置で九六式25mm三連装機銃が置かれています。その直前のマストには13号電探が装備されています。


右舷に回り艦尾。爆雷投射機(Y砲)と爆雷装填台、爆雷投下軌条、爆雷投下台などが集中装備されています。掃海具などは撤去され、代わりに単装機銃が置かれています。


再び艦中央部。2番煙突の前面左右に三連装、直前にも1挺の単装機銃が置かれています。


艦首を後方から。艦橋左右のカッターはボートダビットごと撤去されているのは戦争末期の他の艦と同様なのですが、霞ではこの位置には特に何も置かれておらず、単装機銃は少し前の方に置かれています。



ピットロードの朝潮(上画像奥側)と。


ピットロードの朝潮はキット年次が1990年代と比較的新しいですが考証としては若干不十分という話を聞きます。ただしそれより20年以上古いハセガワのが正しいわけではなく、どちらも完璧を期するのなら多少の手直しが必要のようです。完璧ならね。あんまり言うとキリないし。


艦中央部。やはり最初からある程度ディテールが入ってた方がいいに決まってます。ハセガワの方は艦首甲板の艦橋直後で抉れている部分が左右繋がっていてちょっと目立つのですが、ここを直すのは大変かも。


艦後半はどちらもそれなり。艦尾の爆雷投下台ディテールがハセガワのはちょっと邪魔で、もうちょっと端に寄って欲しい感じ。爆雷投下軌条を置く時にちょっと削らないと収まらないので。



これがやりたかった礼号作戦!足柄と大淀。あと清霜と朝霜もあればなお良し。
清霜と朝霜は夕雲型があればOKですがピットロードの夕雲型後期艦は現在絶版中なのでハセガワの夕雲型後期艦の秋霜を2つ組んで清霜と朝霜だ、って言い張れば良し。ただしハセガワの夕雲型はクオリティが今回の霞と同レベルなのを述べておきます。


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タミヤと違い古いものは古いなりなのがハセガワ。正直初心者には薦めかねます。霞が欲しいならピットロードのを薦めますが、艦プラ作ってれば避けて通れないのが古い難物キット。練習として、難物キットを踏んだ時にこういう時どうすればいいか、それを考えるための教材だと思って経験値にするのにも良いかもしれません。陽炎型みたいにとっととリニューアルしてくれると一番良いのですが・・・

フジミ1/700特シリーズの駆逐艦雪風/浦風です。
前回は様子見がてら浦風をストレート組みしたので今回は雪風です。

雪風は陽炎型駆逐艦の8番艦。1940年1月20日に竣工し、同型艦の「黒潮」「初風」「天津風」と共に第16駆逐隊を編成します。黒潮はすぐに「時津風」と交代し、以後この4艦で軽巡洋艦「神通」を旗艦とする第2水雷戦隊に属します。
太平洋戦争が始まると、最前線での空母の直衛を担うなど重要な位置で活躍します。各地の激戦を経て消耗してゆく多くの駆逐艦の中で雪風はほぼ無傷で生還します。一方で僚艦であった初風、時津風は沈没し、天津風も船体前半を喪失する損傷を受けたため雪風は軽巡洋艦矢矧を旗艦とする第10戦隊所属の第17駆逐隊(磯風・谷風・浜風・浦風)へ編入されます。やや隊内で浮いた存在になりつつもその後の激戦もかいくぐりますが、命令により代わりに救助に向かった艦が撃沈されたり、救助直前に救助対象が爆沈(横付けしていたら巻き添えになっていた)するなど、「運」による生還が目立ち始めます。1945年4月の坊の岬沖海戦では僚艦が全滅したため、同じく生き残った第21駆逐隊の「初霜」を加えるも、7月30日の宮津湾での空襲により初霜は戦没、同地で終戦を迎えました。
終戦後は武装を降ろして復員輸送艦として従事し、1946年12月28日までに1万3千人以上を輸送。その中には漫画家・水木しげるもいました。雪風はその後戦時賠償艦として中華民国に引き渡され、中華民国海軍旗艦「丹陽」となります。台湾に残されていた日本軍の武装を流用して再武装され、40口径八九式12.7cm連装高角砲や「長10cm」65口径九八式10cm連装高角砲、九六式25mm機銃などが搭載されましたが、補給の関係から米国式の38口径5インチ単装両用砲や50口径3インチ単装両用砲、ボフォース40mm機関砲などに換装されています。その後国共内戦を経て台湾に渡り、中国人民解放軍との戦いにも参加し戦果を挙げています。1965年に老朽化により退役し、練習艦となっていましたが1969年の台風で損傷し廃艦される事となり、1971年に解体されました。


さてウチに来た個体は単装機銃(H部品×2)が欠品していたハズレ品。なので単装機銃を他から調達してこなければなりません。


出来れば同じフジミのものが良かったのですが、金剛の余りが1個(右下)、扶桑?の余りが12個(中下)と13挺。もうちょっと欲しいので残りは他社で。左上はピットロードの駆逐艦キットの余り。右上はアオシマ大淀だったかな?左下はピットロードの不知火豪華版に付属のもので、若干小さめ。


フジミ雪風/浦風は2隻セットで半分は浦風に使ったので残りが雪風。連装/3連装機銃のF部品は2隻で共用。


今回は「本番」として一緒に買ったフジミのエッチングパーツ雪風用も使用します。


説明書。後マストの直後の機銃台の下にあるパーツの組み方が書いてなかったりと、やはり若干不親切。番号が間違っているのも1か所ほどあったので注意して組んで下さい。


エッチングパーツそのものは2隻セット用のためか2隻分あります。予備パーツと考えてもよいかもしれません。


それでは製作開始。手始めにエッチングパーツ全体にメタルプライマーを塗ります。エッチングパーツに塗装する場合、このプライマーを塗って被膜を作っておかないと塗料が食いつかず、切り離したり曲げたりしている間にバリバリ剥がれてきます。ただしプライマーを塗っていてもある程度は剥がれるので、そこは組み付け後にタッチアップ塗装しましょう。プライマーはクリア塗料のような使用感ですが、ニオイが強烈。臭い!


船体パーツを組んでゆきますが、艦首甲板は削る部分があるので後回し。


艦首甲板パーツは後面左右の階段と、艦橋の取りつく部分の前に3つ並んでいるホースリール(糸巻きみたいなボビン状のパーツ)、その前方、砲塔の取りつく部分の右後ろに1個あるホースリールをそれぞれ削り取っておきます。


艦首甲板を接着。煙突基部や艦首先端のフェアリーダーも取り付けておきます。


リノリウム部分を43ウッドブラウンで塗装。


残りを32軍艦色2で。


29艦底色で船体側面の下端をマスキング後に塗装。艦名デカールは無いので艦底に記名しておくと陽炎型の何だか分からなくなる事がありません。フルハルの場合はどうしましょう?


パーツを組みながらエッチングパーツを取り付けてゆきます。今回のエッチングパーツはこれまで使ったものとは違い、やけに柔らかくて切り離しや曲げがしやすい分、脆くて破損させやすいため細心の注意を払いながら作業する必要があります。フジミやピットロードのキットに付属のものはステンレス製ですが、今回のものは色をみるに真鍮なのでしょうか?


作業を進めてゆきます。全体的にパーツを左右貼り合わせる場面では穴に対しダボが太い傾向にあるので、ダボを細めて穴を拡げておけばピッタリ貼り合わせられます。


エッチングパーツの接着には普通のアロンアルフアを使っていたのですが、段々しんどくなってきたので買っておいたゼリー状瞬間を出してきて使ってみるとウソのように作業性が上がりました。最初からこちらを使う事を強くお勧めします・・・
画像奥は今回の一番の難所と思しきエッチングパーツによる13号電探。グチャグチャになってしまいました。


防弾板や手摺りを取り付ける前に単装機銃を配置します。ただ、雪風の1945年時の単装機銃の数はググってみるとどこでも14挺と書かれているのですが、説明書通り組むと18挺もあります。どこか4挺余分なのか?とアオシマ雪風1945の箱下面の図によると、艦首甲板の後端と、その後ろの左右で合計4挺が書かれていませんので、ここの4か所はオミットしておきました。(ただ、タミヤの1/350雪風だと艦首甲板後端には置かれているのですよね・・・)
それともう一つ、艦橋前の機銃台に置かれている機銃も、説明書では連装機銃ですがその後の図ではいつの間にか3連装になっており、ここもググって調べてみると3連装が正解のようす。タミヤ1/350雪風もフジミのちび丸雪風もここは3連装が鎮座しています。


防弾板と手摺りを取り付けてゆきます。フジミの那珂や名取では手摺りののりしろが独特で取り付けに苦労したものでしたが、こちらは点ではなく線ののりしろがあるので、ゼリー状瞬間による作業性もあって楽に取り付けられました。説明書だと艦橋左右の防弾板は長いものと短いものを2枚並べているように見えますが、実際には1枚です。防弾板は基本的に単装機銃の前に取り付くので、防弾板の無いところに取り付け指示のある単装機銃はやはり間違いなのかもしれません。




1番煙突左右に雪風固有の識別マークを貼り、旗も取り付けます。エナメルフラットブラックとジャーマングレーでウォッシングして完成。



苦労の甲斐あって上から見た時のみつしり感がたまらん・・・



手摺りがあると横からの見た目も豪華。現物は細すぎて見えないと言いますが、接写したりして近寄ってガン見するのにはやはり手摺りは見栄えを相当に引き上げます。



各部を観察。といっても陽炎型はもう4つ目、前回の浦風でも語ったので簡単に。
主砲塔は50口径三年式12.7cm連装砲塔(C型砲塔)。太平洋戦争中盤に対空兵装強化として艦橋前に機銃台を増設してここへ九六式25mm連装機銃を1基置いていましたが、雪風は戦争末期になって更に3連装へ換装していたようです。


艦中央部。戦争末期に1番煙突の左右面に識別用のマークがいくつかの艦に記され、雪風は三角のマークが記されました。


2番砲塔を撤去して跡地に3連装機銃を配置する改装が戦争後期に陽炎型までの駆逐艦に施されています。砲を撤去し機銃を配置する改装は軽巡洋艦の多くにも及び、敵航空機の攻撃には相当に頭を悩ませていた事がうかがえます。


右舷に回り艦尾。敵航空機に悩む一方で、海面下の敵、すなわち潜水艦にもかなり悩まされており、艦尾に集中して置かれている対潜装備にこの事が物語られています。第一次大戦の前くらいまでは敵はせいぜい水平面だけだったものが、その20数年後には完全に360度全方位から敵が迫るという事態に変わっていたのです。


全方位から迫る敵をいち早く察知するための装備として、前マストに増設された22号電探、後マスト前面に装着される13号電探、この他九三式水中探信儀(アクティブソナー)&聴音器(パッシブソナー)も装備されています。


艦橋の後部に陽炎型の竣工時~開戦時頃のものには見られない構造物が増設されていますが、ここは電探室だそうです。更にその後ろにも電探の部品庫が増設されています。


浦風(画像上)と。


浦風はエッチングパーツを使用していませんがそれでも防弾板など特徴的なパーツは省略されずに再現されています。ただやはり艦橋頂部などは情報量にかなり差があります。


単装機銃は欠品にふてくされて全部オミットしたものの、10個くらい余裕で調達できたので取り付けておけば良かったかなぁ・・・


いくつかのパーツはエッチングパーツに置き換えられているため詳細さはだいぶ違いますが、エッチングパーツじゃないからといって貧相かというと、そんな事もありません。


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現在簡単に入手できる陽炎型の1/700キットとしてはフジミ雪風は最高難度といっても良いでしょう。これに更にやや扱いづらいエッチングパーツを加えると、「艦これで興味が出たので艦船キットは組んだ事ありませんが雪風のキットをエッチングパーツ込みで~」というYahoo知恵袋で見た発言がいかに無謀かつ蛮勇であるかが良く分かりました。初心者の方はアオシマが良いですが、あれもオプションパーツを盛り付ける前提な印象で素組みでは不満が残る部分が多くガッカリするかもしれません。雪風「だけ」欲しい人はタミヤの1/350が組みやすさも仕上がりも良好なのでそちらを強く勧めます。フジミのキットはどのジャンルも満足したかったら努力と根性を要求されると思って下さい。簡易な構成のキットはプロポーションやパーツ合わせがグズグズで大幅な改修が必要であったり、詳細なキットは必要以上にパーツを細分化し、組み順も頭をひねって考えなければならなかったり。それだけに完成させられれば満足度は高いです。

フジミ1/700特シリーズの駆逐艦雪風/浦風です。
まずは1隻目を浦風として組む事にします。


外箱はウォーターラインシリーズの軽巡くらいのサイズ。高さ方向は薄め。


一見すると雪風の単品キットにしか見えませんが、小さく「浦風との2隻セット」とあります。これ絶対雪風だけだと思って買って開けたらパーツ重複してる!?って慌てる人多数だと思います。何とかならんか。


雪風についてしか書かれていません。可哀そうな浦風。
浦風は陽炎型駆逐艦の11番艦。太平洋戦争開戦のおよそ1年前である1940年12月15日に竣工、同型の「磯風」「浜風」「谷風」と共に第17駆逐隊を編成、軽巡洋艦「阿武隈」を旗艦とする第1水雷戦隊に属し、太平洋戦争開戦となる真珠湾攻撃には南雲機動艦隊の護衛として参加、その後も各地を転戦します。激戦を幾度となく経験しますが1944年11月、サマール沖海戦の後本土へ帰還する戦艦「金剛」「長門」「大和」を護衛しますがその途上、台湾海峡において米潜水艦「シーライオン」の襲撃を受け、金剛は雷撃により沈没、長門を狙って外れた魚雷が命中し浦風も沈没します。僚艦は金剛乗員の救助に追われ、その後で浦風の元へ向かった時にはわずかな浮遊物しか残っておらず、浦風の乗員は全員戦死となりました。


開封。バラストを省略した旨のピラ紙があります。



説明書は縦に長い1枚紙。塗装指示や使用塗料欄にリノリウム色が無く、相変わらず説明不十分かつ不親切な説明書です・・・


パーツ全図。1隻分だとこれだけになります。連装・3連装機銃のF部品は1枚のみで2隻で共用しますが、それ以外は1隻につき1枚ずつ。ただ上の写真、何か足りませんよね?単装機銃のH部品が1枚も入っていないハズレ品を掴まされてしまいました。二度とこういうことがないようにおねがいしたいものです。


モールドはビッシリと入っており、その濃度は他社の陽炎型のキットを凌ぎます。



それでは製作開始。まるで戦艦キットのような船体・艦底・甲板前後の構成。


バラストは入っていませんがバラスト押さえのパーツは甲板の土台にもなるので取り付けておいた方が甲板上の配置物を置いていく時に圧力を掛けても安心できるでしょう。塗装前に艦首の小パーツと1番煙突&1番魚雷発射管の土台のパーツは接着しておいてもよさげ。


リノリウム色として43ウッドブラウンを塗装。ちょっとリノリウム部分と鉄板部分の境界が曖昧で迷いますが、大体で。


32軍艦色2で残りを塗装。艦底を29艦底色で。


1番煙突周辺から後ろにかけてパーツを配置してゆきます。小さく細かいパーツが多く、出来は良いのですがあまり初心者には薦められない細かさ。慎重に。また特シリーズはその細かさの上でパーツ合わせが非常にタイトで余裕が無いのでなおの事。


艦橋は後部の下からはめ込むパーツを忘れないように。(忘れました)
前マストはそこを貫通して下まで突き刺さるのですが、やはりタイトで余裕が無いため無理に押し込もうとするとマストが折れます。(折りました)
しかしホントまあよくもここまでパーツを細分化してくれたな・・・って感じで組んでいる途中は恨み言が出るレベルなのが特シリーズ。でも苦労の甲斐はちゃんとあるので頑張ります。


パーツを全て載せ終えたところ。左舷側の艦中央部の防弾版2枚は説明書だと変な位置に指示されていますが、左右対称に置いた方がスマートかな?
単装機銃は仕方ないので全オミット。雪風1945として組む場合と浦風1944として組む場合とでの違いは単装機銃の数の差だけですが、それでも最低10個が必要。


煙突のつや消し黒やレタッチなどをして完成間近。




エナメルフラットブラックとジャーマングレーでウォッシングして完成。デカールは旗だけありますがモチベーションが下がっちゃったので省略。こんでいいや。



単装機銃をオミットしても結構な密度感。



抜きの方向の関係で省略されがちな甲板構造物の側面もビッシリモールドなので側面の見栄えも良好。



各部を観察。とはいえ陽炎型はもう3隻目なので軽めに。主砲は50口径三年式12.7cm連装砲(C型砲塔)。その後方には艦橋前に増設された九六式25mm連装機銃が1基。マストの途中には増設された22号電探が確認できます。


艦中央部。1番2番の煙突のそれぞれの後方には九二式61cm4連装魚雷発射管が1基ずつ置かれ、1番用は1番煙突の左右に、2番用は後マストの下に次発装填装置があります。これ自体は初春型駆逐艦から装備されていますが、陽炎型からは機力により装填速度が数秒にまで短縮されました。


艦後部。後マストの前面に13号電探が装備されています。その基部と後方にかけては2番砲塔がありましたが改装によりてっきょされ、代わりに九六式25mm3連装機銃がタンデム配置で2基置かれています。その後方には3番砲塔、爆雷装備が並びます。


右舷に回り艦尾。艦尾には爆雷投下軌条が2条設置されており、その前方にはY砲(九四式爆雷投射機)と装填台が設置されています。キットではその周辺にあるデリックなども細かく再現されています。


再び艦中央部。甲板の舷側に所々立てられている板は防弾板で、太平洋戦争の後半になって陽炎型の生き残っている艦に増備されていたようです。単装機銃をオミットしているので用途が分かりづらくなってしまっていますが、単装機銃の射手を防護するためのもののようで、防弾板の内側は単装機銃の設置位置となっています。


艦前方。艦橋の左右舷にも防弾板が設置されています。ここの位置には元々カッターとボートダビットがありましたが、撤去されて単装機銃が設置されていました。



3メーカーによる陽炎型の比較。上(奥)からピットロード不知火、アオシマ磯風、フジミ浦風。ピットロード不知火はディテールアップパーツとエッチングパーツが付属する豪華版ですがエッチングパーツは連装機銃2基だけを使用し、残りのエッチングパーツはアオシマ磯風に流用しています。アオシマ磯風は元々簡易なキットでディテールが寂しいためピットロードのキット付属の単装機銃その他のパーツでデコレーションしています。


艦首~


艦中央部。


艦尾。値段の安さ、組みやすさなど初心者にもお薦めできるのは断然アオシマですが、省略が激しく盛り付け改造ベースという印象。フジミは対称的に非常に緻密ですが2隻セットのため値段が高めで組むのにも慣れが必要なため最低でも何隻か組んでからにした方が良いでしょうね。ピットロードは組みやすさも詳細さも中間的なバランスの取れた好キットではありますが値段はちょっと高め。また陽炎型の竣工時~1942あたりまでは良いのですが1944以降などの末期仕様だと防弾板などが別売りエッチングパーツ頼みになり、それが無いと物足りないというジレンマが発生します。


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ちゃんと部品が揃っていれば組むのは大変なれど完成後の満足度は最高なキットでしょう。一方で初心者にはパーツ飛ばした、失くしたの嵐になりやすく、2隻セットを予備部品付きとみても絶対的な組みにくさが壁。ただし初心者であろうと恐れずこんな難物でも組み上げれば高い経験値が得られると思いますので、プラモ作りが嫌にならない程度に積極的に挑んでみていただきたい。

ピットロード1/700スカイウェーブシリーズの駆逐艦夕風です。

夕風?夕雲でも夕立でも夕張でもなく夕風(ゆうかぜ)。峯風型です。

夕風は峯風型駆逐艦の10番艦。峯風型駆逐艦はイギリスの駆逐艦の模倣であった前型までからとはうって変わって日本独自の設計による駆逐艦であり、1番艦である峯風の竣工が1920年と古いものの、戦間期の日本の駆逐艦として続く神風型・睦月型のベースともなっています。最大速力39ノットと高速であり、中でも4番艦の「島風」は40.7ノットを記録し特に快速を誇っていました(後に高速駆逐艦として建造された丙型駆逐艦にはこの「島風」の名が継承され、先代を凌ぐ40.9ノットを記録します)。
夕風は1921年8月に竣工し、同型艦の島風・太刀風(たちかぜ)と共に第三駆逐隊を編成します。太平洋戦争の直前頃には老朽化により予備艦として係留されておりこのまま退役を待つばかりでしたが、少しでも戦力が必要だった事、まだ30ノット以上の速力が出せた事から現役復帰し、太平洋戦争においては主に空母「鳳翔」に随伴し、鳳翔が内海にて練習艦として従事するようになると夕風もこれに伴って対潜哨戒や着艦訓練の支援(トンボ釣り)に従事します。1945年春頃になり鳳翔が現役を退いて呉に留まると夕風は別府湾(大分県)に異動となり、そこで空母「海鷹」と共に訓練に従事します。そして同年7月24日の空襲は何とか凌ぐものの、室津港(山口県)へ退避しようとしたところ海鷹が触雷し航行不能となったため別府湾内の日出港まで夕風が排水量12~13倍もある海鷹を曳航し、これに成功。結局28日には空襲により海鷹は大破するものの、曳航により大半の人員が退避できたため犠牲者は20人程に抑えられました。夕風は別府湾にて無傷で終戦を迎え、復員船として従事した後1947年に賠償艦としてシンガポールに回航され、イギリスへ引き渡し後、現地で解体されました。


外箱はウォーターラインシリーズの軽巡くらいの大柄な箱。最近のピットロードの外箱は青い共通の箱にラベルシールを貼っています。


開封。外箱は大きいですが中身はちんまりしています。


同封の塗装指示。同型艦の名前が列挙してあったりはせず、ちょっと寂しい。


説明書。読む要素が少ない・・・説明書では夕風の1944年9月仕様と、同型艦である汐風(しおかぜ)の1945年1月仕様の組み立て図が書かれています。竣工時~太平洋戦争中盤頃までの仕様で組む場合は別途資料が必要。また、甲板上のモールドを削って真っ平らにしなければならない部分もあり、ちょっと初心者の方には厳しいかも。


パーツ全図。ランナー2枚とデカール1枚。


名前デカールは7番艦~12番艦までの羽風(はかぜ)・秋風(あきかぜ)汐風(しおかぜ)・夕風(ゆうかぜ)・太刀風(たちかぜ)・帆風(ほかぜ)のものが付属。駆逐隊番号も付属しますが戦間期のうちに解隊されているし装備も大戦末期なので旗以外は使わないのが本来なのかも。お好みで。


モールドはピットロードらしくシャキッとしています。



それでは製作開始。船体の構成は船体と艦底と艦首甲板の3パーツ。


まずは説明書通り魚雷発射管の基部を2つ、魚雷格納庫や艦尾の機雷投下軌条などを削ります。まずタミヤの薄刃ニッパーなどで大雑把に切り取り、リューターで面を平らにしました。


舷外電路が箱絵に見られるので伸ばしランナーを貼って形成。ついでに魚雷発射管の基部を削った時に巻き添えになったリノリウム押さえのモールドも伸ばしランナーで補修。


リノリウム色を43ウッドブラウンで、他を32軍艦色2で塗装。艦首甲板はウェルデッキの部分など奥まっている部分を塗ってから接着した方がスマートか。


パーツを配置してゆきます。面倒なのはモールドを削る点だけで、他はサクサク組めます。


パーツを乗せ終えたところ。艦尾は爆雷装備が山盛りですが、印も何もないので設置場所は塗装指示書を参考に。


艦名デカール(両側面と艦尾)と旗を貼りました。




エナメルフラットブラック、フラットブラウン、ジャーマングレーでスミ入れ&ウォッシングして完成。



峯風シリーズは特徴的で組んでて楽しい・・・



12cm単装砲塔は6個付属のうち2個しか使わないので、これ先に組んでおけば前回のハセガワ睦月の時に流用できたなぁ・・・(後の祭


各部を観察。建造当時流行っていた機雷戦に対応のスプーン型艦首と短船首楼上の甲板後端に45口径三年式12cm単装砲。その後方ウェルデッキに六年式53cm連装魚雷発射管が・・・ありません。おそらく爆雷装備で重くなった分の軽量化のためだと思うのですが、1・3番魚雷発射管は撤去されています。艦橋は睦月型で行われたような密閉型への改装はされておらず、オープントップの羅針艦橋に幌屋根を被せたもののまま。艦橋左右の6.5mm機銃が置かれていた段は前方へ延長されて左右と繋がり、2基の九六式25mm連装機銃が設置されています。マスト前面に13号電探が設置されているのも確認できます。


艦中央部。煙突は前後とも頂部が延長されて特型駆逐艦などと似た形に変更されています。2本の煙突の間の台には2番砲塔がありましたが25mm連装機銃に置き換えられています


2番煙突の後ろには3番砲塔、その後ろに2番魚雷発射管、探照灯&マストと続き、3番魚雷発射管跡地、左右舷に25mm単装機銃、4番砲塔に代わって25mm連装機銃。この辺りの配置は峯風型でも12番艦までと13番~15番艦とで並びが違い、13番艦の野風以降3隻は神風型と同様に連装魚雷発射管が2つ並びその後方にマストの前後に3・4番砲塔という配置に変わっています。


右舷に回り艦尾。艦尾に2条あった機雷投下軌条に代わって爆雷投下軌条が2条設置され、その前方に爆雷投射機(Y砲)と爆雷装填台が3セット並んで設置されています。その左右舷には25mm単装機銃も置かれており、砲と魚雷が削減され機銃と爆雷が多く増備されているのが見てとれます。このほか93式水中聴音機などが装備されており、対空・対潜に振った装備に変更されています。


太平洋戦争終盤頃の装備だとどの艦も短艇類は搭載数が減っています。


峯風型駆逐艦は太平洋戦争開戦時には老朽艦であったものの需要はあったため廃艦するのを取りやめてそのまま内地での運用や後方での船団護衛などの担い手として、あるいは改装されて高速兵員輸送船や有人魚雷「回天」搭載艦となったりして現役が続行され、これもまた多くが戦没していますが、他の艦型に比べると終戦まで生き残った艦4隻と多い方でしょうか。



次型である神風型駆逐艦の疾風(はやて)と。


神風型は峯風型の13番艦以降(野風型、峯風改型とも)と同様のレイアウトで、装備がマイナーチェンジされた程度の違い。魚雷発射管が見た目は同じですが六年式から一〇年式に変更され、復元性改善のため船体が僅かに大型化しています。疾風を含む神風型後期型では機関の変更による低重心化や機銃が三年式6.5mm機銃が留式7.7mm機銃に置き換わるなどの変更が更にされています。


艦中央部は配置の変更により結構違って見えます。この疾風は開戦時の仕様なので装備は大戦末期の仕様である夕風の方が近代化されています。


艦後半も然り。



左から夕風(峯風型)、疾風(神風型)、長月(睦月型)。並ぶとやはり睦月型の本気度が高く、実際睦月型は第一線で戦い全艦が戦没しています。



@@@




旧型駆逐艦も中々良いもんでしょ。ちょっと面倒が多いキットもありますが、初心者でも気合い次第で割と何とかなるんじゃないでしょうか。興味があったら腕前にかかわらず是非手を出してみていただきたい。


ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの駆逐艦睦月(むつき)です。


箱サイズはおなじみの小さな駆逐艦キットのもの。以前組んだ三日月の元キットです。このハセガワ睦月は1973年頃からあるキットで、太平洋戦争開戦直前頃に艦橋前に連装機銃を追加、白色の迷彩塗装を施された状態の仕様でキット化され、後に三日月が竣工時の姿で追加されました。


睦月(むつき)は睦月型駆逐艦の1番艦。睦月型駆逐艦はイギリス製駆逐艦の模倣から脱し日本独自の設計となった峯風型駆逐艦の最終進化型であり、特徴としては53cmを連装3基6門装備していた魚雷を、日本海軍の駆逐艦として初となる61cm魚雷3連装2基6門に置き換えています。
睦月は「第19号駆逐艦」として1926年に竣工、1928年には「睦月」の名が与えられました。1935年の第四艦隊事件の際に同型艦である菊月と共に艦橋が破壊されたため、設計を改めて修理が行われました。太平洋戦争開戦時にはすでに旧式化していたものの、61cm魚雷を装備する事もあり第一線に投入され同型の如月(きさらぎ)・弥生(やよい)・望月(もちづき)と共に第30駆逐隊を編成しますが、開戦直後のウェーク島攻略戦時に如月が沈没し、翌年5月には補充として同型の卯月(うづき)が編入されました。第30駆逐隊は第八艦隊に属しガダルカナル島やソロモン海などを転戦します。そして1942年8月のガダルカナル島における戦いの中、米陸軍のB-17爆撃機の攻撃を受け沈没します。


箱下面は塗装図。特徴的な迷彩塗装がされていますが、元の色(軍艦色2)の上にエアクラフトグレーを乗せてゆく塗りになっています。ただどの部分に塗るのかが曖昧で、他社キットの睦月では艦橋が真っ白だったりするので面倒臭い!と思うなら普通に軍艦色2だけの塗装にしてしまってよいでしょう。


開封。キットのボリュームはそこそこ。


説明書。NO.77とナンバリングが古いままになっており、古さが伺えます。


主要パーツ群。少なくシンプルにまとめられています。


多少バリがありますが、ハセガワの古いキットとしては可愛らしいレベル。


静模のディテールアップパーツ小型艦用が1枚付属します。ただし使うのはX37の十二年式三連装魚雷発射管が2つとX40の九六式25mm連装機銃が1つ、7mカッターが2つくらいでしょうか。7m内火艇は穴の位置が違うので使いにくいです。今回はいずれも使用しませんでした。



それでは製作開始。船体部分は船体パーツと艦底パーツ、間にバラスト、船首甲板の構成。


船体側面にはディテールが何も無いので舷窓をピンバイスで開けておきました。


三日月の時に気になった12cm単装砲塔の小ささを、プラ板を切った貼ったして若干大型化。


形はピットロードの睦月型などの12cm単装砲を参考にしました。ただしあちらはやや大き過ぎるらしいのであちらよりは小さめに。


リノリウム色として43ウッドブラウンを塗り、他の部分を32軍艦色2で塗装。リノリウム色に塗る部分は資料や作例や各メーカーの説明書によって違いがあり、どれが正解かわかりません・・・ピットのは艦橋の横もだけど艦尾はもっと前までだし、某所に展示されてる大きな模型は艦首甲板にもリノリウム色の部分があるし。


パーツを乗せてゆきます。ピンセット無しでサクサク組み進められます。


パーツを一通り載せ終えたところ。ハセガワ睦月の艦橋横のカッターの下あたりの部分は竣工時のままになってるミスがあり、正しくはここは切り飛ばして甲板に直にボートダビットを置くのが正しいようです。


デカールを貼ります。手脂のせいか、シルバリングしまくりでちょっと苦戦。マークセッターで丁寧に対処します。




いつも通りエナメルフラットブラック、フラットブラウン、ジャーマングレーでウォッシングをして完成。ちょっとジャーマングレーが薄まり過ぎてつや消し不足。そろそろ新しいのを出さないと・・・



古いキットなりにあっさり気味ではありますが、ガッカリするほどではありません。



ピットロードの睦月型も船体側面のディテールは浅いので側面の見た目はそれほど劣りません。ただ喫水の高さは好みが分かれるかも。


各部を観察。艦首は峯風型とその改良型である神風型ではスプーン型だったものが睦月型からは凌波性に優れたダブルカーブ型に改められました。艦首甲板後端に置かれた主砲塔は45口径三年式12cm単装砲塔が引き続き搭載されています。その直後の一段下がったウェルデッキには神風型までの53cm連装魚雷発射管に代わり、十二年式61cm三連装魚雷発射管に置き換えられ、後に後継型の特型駆逐艦が波避けとして砲室が備え付けられるようになるとこれに倣い睦月型にも砲室が取り付けられました。


艦中央部。艦橋は竣工時は前面が尖ったオープントップの羅針艦橋に幌屋根という従来式のものでしたが、第四艦隊事件の際に強烈な波浪を被って艦橋が破壊されたため修理のついでに密閉型の艦橋に作り代えられ、同型各艦も同様の形状に改装されています。機関は峯風型から続くロ号艦本式缶4基に神風型後期艦から採用された艦本式タービン2基2軸による38500馬力の出力を持ち、峯風型からは重量が増したとはいえまだ最大速力37.25ノットの快速を保っていました。煙突は缶4基から2本ずつ束ねられているため前後に長円断面をもつ煙突が2本立っており、煙突頂部は改装により竣工時よりもカットが鋭角に変更されています。


艦後部。峯風型の最終3艦以降から3番砲塔が2番煙突直後から魚雷発射管の後ろへ移動、マストを挟んで3番と4番砲塔が背中合わせになる配置になり、これが睦月型でも踏襲されています。


右舷に回り艦尾。爆雷投下軌条が2条装備されており、旗竿の直前には掃海具がモールドで再現されています。その前方には大雑把なモールドで形状が確認しにくいですが八一式爆雷投射機(K砲)が2基装備されています。


2番煙突の左右にある前後に長い箱状のものは予備魚雷の格納庫。ここからレールに載せて前後の魚雷発射管へ魚雷を運ぶようになっています。1番2番の煙突間には2番砲塔が置かれていますが、特型駆逐艦以降では主砲が連装になったため砲塔数が減らされてここの砲は外され、代わりに艦橋前にあった魚雷発射管がこの位置に移動してきます。


対空兵装は竣工時には艦橋左右に留式7.7mm機銃が1挺ずつ計2挺しかありませんでしたが、太平洋戦争開戦直前の時期に艦橋の前に九六式25mm連装機銃が1基追加されました。ただしこの機銃追加は全ての睦月型で行われたものではなく、艦橋左右の7.7mm機銃の台を前方に拡張して25mm連装機銃を左右1基ずつ計2基に置き換えられたり、2番魚雷発射管の前に台を設置してそこへ25mm3連装機銃を置いたりしていました。睦月型のうち太平洋戦争終盤まで生き残っていた卯月では12cm砲が2基と魚雷発射管1基が撤去されて代わりに25mmの三連装2基、連装2基、単装6挺、単装機銃座2基まで増備されていました。



同ハセガワ三日月と。


艦橋や魚雷発射管に違いが確認できます。


艦中央部。煙突頂部の形状や2番魚雷発射管に違いが確認できます。


艦後部。このあたりは同じ。よく見ると三日月(奥側)の後部マストが前後逆に取りついていました・・・



ピットロード長月と。


喫水の高さがかなり違うため結構印象が異なります。前述のように艦橋前の機銃が長月では連装2基に増備されており、艦橋左右のカッターの下の構造は長月の方が正しいです。


艦中央部。ディテールの詳細さが全然違い、煙突基部などはハセガワは1段高い段の上から生えていますがピットロードは甲板の高さから生えており、キット年次の差を感じます。


艦尾。全然違うのですが、睦月型は艦尾が改装されていたり装備の違いがあったりで一概にハセガワ睦月が大間違いというわけではありません。むしろピットロードの神風型の艦尾はハセガワ睦月に近い形をしています。



奥(上)からピットロード疾風(はやて・神風型)、ハセガワ三日月、ハセガワ睦月、ピットロード長月。


前から。もうどれがどれかわかるかな?



@@@




古いなりのキットですが、安いし組みやすいのでちょっとの考証の間違いなんてわからない初心者や大体そんな形してれば十分というライトユーザー向き。一方で神経質なヘビーユーザーは発狂するキットです・・・

ハセガワは近年は主に大型艦をリニューアルしてきているのでいつかきっと駆逐艦キットも・・・と思うのですが、どうも優先度は低そうで・・・


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