~趣味の世界~
タミヤ1/700ウォーターラインシリーズの空母隼鷹です。


箱は前回・前々回の祥鳳や熊野と同じ長さで厚みが1.5倍くらい。


隼鷹は飛鷹型航空母艦に属し、姉妹艦に飛鷹があります。飛鷹型航空母艦は前回の祥鳳と同様に軍縮条約回避のため平時はその他の艦船として建造し、いざ戦時となれば空母に改装する目的で建造された艦です。ただし祥鳳が軍属の給油艦として建造が始められたのに対し、隼鷹は国が戦時には徴用するという条件で補助金を出して日本郵船により「橿原丸(かしはらまる)」として建造が開始されました。橿原丸は大型の貨客船で、いわゆる豪華客船となる船でしたが、1939年に起工、1940年には情勢の悪化から空母への改装が開始されます。竣工は開戦後の1942年5月。直後となる6月のミッドウェー海戦では4隻の正規空母が失われたため、その後は代わりの貴重な航空戦力として各地を転戦します。1944年以降は戦局の悪化から搭載する航空機が尽き、輸送艦代わりの任務ばかりになってしまいます。1944年12月にはマニラへの輸送任務からの帰途、長崎の女島付近にて米潜水艦シーデビルとレッドフィッシュの雷撃により大破、命からがら佐世保へ帰投後は修理も思うように進まず航行不能状態のまま終戦を迎えます。


ボリュームはありますが古いキットなので構成はシンプルにまとめられています。説明書は2枚ありますが一方は英語版。


説明書は縦長の1枚。元々付いてる折り目でたたむと読みづらいので項の境目で3つ折りに折り直すと作業中読みやすいでしょう。1994年に作り直されている説明書ですが、塗装指示は飛行甲板の下になる部分などが不足気味。付属の艦載機の塗装指示については全く無いので別途資料が必要です(ググれば十分ですが・・・)。


1枚ピラ紙が付属。>PS<と書いてあるランナー以外は伸ばしランナーに使うな、というもの。キットにはPSのランナーしか無いので特に気にする必要はありません。ただ自動車のキットとかだとたまにライターで炙って伸ばしたら伸びずにブチッと千切れるものとかありますね。ガンプラによく入っているABS樹脂やポリキャップなんかのランナーは伸ばしランナーには使えません。



主要パーツ群。でかいので机に全部並べられないので写真2枚。ランナー1枚が巨大なのでパーツを切り取ろうとして振り回して組み上げ中のキットにぶつけたりしないように注意しましょう。見ての通り大きいもののパーツ数はそれほど多くはありません。


静模の大型艦用ディテールアップパーツが2枚付属しますが使わなくても完成させられます。というか置き換えるべき主要パーツのディテールがほぼ同等レベルの質なので今回は不要となります。タミヤのキットではよくある事です。


1973年のキットです。今更驚きませんが、艦底パーツの下面に毛筆体で「隼鷹」とモールドされているジジ臭さに年式の古さを感じます・・・



早速手始めに船体と艦底パーツを接着しますが、艦尾あたりなどは多少合いが悪くなっているので適宜に擦り合わせてやります。


接着後、重しをしているところ。


今回は大まかな軍艦色2の塗装をスプレー塗料で行いました。住宅事情などでこれが出来ない人もいるでしょうが、やはり筆でサカサカ塗るより手間が大幅に省力できます。大きいキットほど効果が高いでしょう。


艦底色で側面のみを塗りました。こんなデカイの下面全部塗ってられませんし。


飛行甲板はマスキングして44タンで塗ります。前方の曲面はマスキングしづらかったのでフリーハンドで。ここは塗膜が厚くなると木甲板のモールドが薄いため埋まってしまい真っ平になってしまうのでできればここもスプレー塗装でやった方がきれいになるでしょう。


パーツを取り付けてゆきます。作業性は良好でタミヤのキットは組みやすさを本当に大昔からよく考えてると感心します・・・バラストは2枚付属しますが取り付けると船体が重くなりすぎて持ち上げる際に持ったところが破損する危険があるので取り付けない方が良い気がします。


さてこのキット、デカールは付属しませんので飛行甲板の白線なども自分で塗らなければなりません。とはいえモールドは刻まれているのでそれに合わせてマスキングするだけでOK。恐れる事はありません。


生乾きの内にサッとテープを引っぺがします。アレスティングワイヤー(横方向に走る着艦索)の辺りでモールドが高くなっていてそこで横に漏れるのは仕方無いのでまたタンでレタッチしてやります。


2か所矢印様の白線がありますが、これは1本づつマスキングしては塗り、乾燥後またマスキングしては塗り、とやるのが安全。


軍艦色2で細かい所をチマチマと。余力のある人は飛行甲板後端の着艦標識(赤白の縞模様)に挑戦しても良いでしょう。
ところで箱絵だと艦全体が緑色ですが、これは最終仕様での迷彩塗装であり、艦の側面には明るい緑ベースに濃い緑で輸送艦の艦影を模した迷彩が描かれていたり、甲板も瑞鳳のような迷彩柄だったようです。今回の塗装のように普通の色をしているのは姉妹艦の飛鷹共々1943年頃まででしょうか?(飛鷹も1943年後半には防火のため木甲板が剥がされるなどしてやや様相が変化していたようです。)


飛行甲板を接着する前にウォッシングをしておきます。飛行甲板の裏をフラットブラック、それ以外をジャーマングレーで大雑把にやってしまいます。エレベーターを下げた状態にする場合、説明書だと各段に艦載機を配置していますが、折角細かく塗った艦載機がほとんど見えなくなってしまうのも悲しいので特になにも置かずにしておきます。飛行甲板接着後は後部エレベーター内に物を落とさないように注意しましょう。


艦載機のランナーには静模や1994といった刻印があり、元々付いていたものではないようです。説明書中にも零戦・97艦攻・99艦爆・彗星とありますが、何か形が違います・・・


ググって形状を確認すると、1が流星、2が彩雲、3が零戦、4が天山、5が彗星のようです。車輪や搭載兵装などを軽くディテールアップしてやります。

※追記※
静模の1/700ウォーターライン日本艦載機後期型(516)と同じもののようです。そちらの内訳は1が流星改、2が彩雲、3が零戦52型、4が天山12型、5が彗星12型となっています。


塗装は上面を成型色のまま、下面をガルグレー、キャノピーを青、主翼前縁内側を黄、日の丸を赤、機首を黒、プロペラ軸を茶としました。


飛行甲板を接着後、重しをしているところ。


艦橋は飛行甲板周辺のパーツを配置。もうちょっと。




完成。大型艦ながら短期間で完成できました。



エレベーターは折角なので下げた状態にしました。上の方の白線をマスキングしている写真でもわかるように、もちろんエレベーターを上げた状態で組む事もできます。



目線を下して観察。ホントに軽空母?ってくらいデカくて迫力があります。


各部を観察。船体は豪華客船から改装しているためか艦首などかなり堂々とした形をしています。艦首の上に1基、飛行甲板先端の左右には2基ずつ4基の九六式25mm3連装機銃が装備されています。その後方に3個ずつ並んでいる箱状のものは12cm28連装噴進砲。直径12cmのロケット弾28発を一斉発射するロケットランチャーです。有効射程は1500mほどであり、無誘導のため多量に発射する飽和攻撃・・・というよりは派手な花火による威嚇程度のものだったようです。マリアナ沖海戦の後から伊勢型戦艦や航空母艦に搭載され始め、隼鷹には1944年の9月頃から装備されていたようです。


1番エレベーター付近。左舷側に2基、右舷側に1基の40口径八九式12.7cm連装砲が確認できます。キットでは再現されていませんが、単装機銃も多数配置されていたようです。


1・2番エレベーター間。左舷側には4基の3連装機銃が配置されています。


2番エレベーター付近。左舷側には1基の連装高角砲がありますが、その後方の台の上にも連装機銃が置かれていたのですが、キットでは何故か配置する指示がありません(連装機銃のパーツが1個余るので、多分本来ここの分なのでしょう)。エレベーターの左後方には21号電探が置かれています。


艦尾乾舷。両脇に内火艇、内側の1段掘り下がった部分に大発が置かれていますが、ここは上下が狭く大発はほとんど見えません。艦尾には増設された機銃台の上に3連装機銃が2基置かれています。


艦尾右舷側。3連装機銃が4基並んでいます。


右舷側艦橋付近。日本の軽空母では珍しいアイランド型艦橋。煙突は艦橋と一体化しており、艦橋の上から外側へ傾けて突き出しています。煙突の後方にあるマスト上には13号電探が取り付けられており、煙突の前方すぐの位置にも21号電探が配置されています。艦橋の後方側面に2基の連装高角砲、艦橋の直後に2基の3連装機銃。艦橋の外側壁面に1基の連装機銃、艦橋の前面と直前に2基の3連装機銃があります。


艦橋より前方右舷側。連装高角砲、墳進砲、3連装機銃2基の順に並んでいます。


甲板上の艦載機群。列の一番前の1機は艦上偵察機の彩雲。3座の高速偵察機で、この時代ではまだ珍しい偵察専用の艦上機です。1944年6月ごろから配備が始まりますが、この頃には戦局の悪化が著しく、実は艦載しての運用はされておらず専ら陸上基地から運用していました。


その後方6機のおなじみ零式艦上戦闘機。キットでは零戦のどの型かまでは書かれていませんが、何となく52型のつもりで。2機のみ増槽を装備した状態にしてあります。


更にその後方の4機は艦上爆撃機の彗星。水冷倒立V型12気筒エンジンである「アツタ」を搭載するため外国の機体のような流線型の機首を持つ小型の爆撃機です。翼下にハードポイントを持つ12型に仕立ててあります。大戦末期においては日本の工業力ではやや過ぎたものであった水冷エンジンはトラブルが絶えず、信頼性の高い空冷エンジンに換装した33型が開発されますが、こちらは主に陸上機として、また特攻機として用いられました。


その更に後ろの1機は艦上攻撃機の流星。大戦末期の艦上攻撃機ですが、名前が爆撃機系なのは攻撃機と爆撃機を兼任させるための機体として開発されたためです。胴体の側面からの中翼・逆ガル翼が特徴。流星改は流星の試作1号機が失敗作だったため改設計を施し製作された試作2号機とその量産型を流星改とする説、量産型である流星11型のうちエンジンを誉21型に換装した後期生産型を流星改とする説などがあり、あまりはっきりしていません。


列の最後尾の4機は艦上攻撃機の天山。97式艦攻の後継で配備は大戦後半となる1943年。大型高速の機体のため、低速小型の軽空母ではロケットブースターを用いて運用したりしていました。隼鷹は大型ですが速度は正規空母の30ノットには及ばない26ノットほどであったためこちらでもそうした運用がされていたかもしれません。


空母祥鳳と。艦の全長はあまり差が無いものの、飛行甲板は長さ・幅共にかなり差がある印象。


空母龍驤と。この辺りとではかなり全長の差がついてきます。


水面から飛行甲板までの高さには定評のある龍驤ですが隼鷹は更に高い位置に飛行甲板があります。


空母鳳翔と。戦艦と軽巡洋艦くらいの差があります。


軽空母ばかり4隻が揃いました。


@@@



傑作キットの誉れ高いタミヤの隼鷹、古さは隠せないものの組みやすさ、見た目の水準はまだまだ現役を張れるものがあり、普通に薦められます。大きくて迫力もあるし、組む自体は難易度が低めなので残った余力を作りこむ事に費やせるのです。スキルアップにも良好な教材となります。惜しいのは姉妹艦の飛鷹が無い事でしょうか。隼鷹も短い戦中の現役期間の中でもいくつかの形態があり、改造によりそれらや飛鷹を再現するのも面白いでしょう。もちろん普通にサッと組んでも全然OKです。

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