~趣味の世界~
フジミ1/700特シリーズの駆逐艦雪風/浦風です。
前回は様子見がてら浦風をストレート組みしたので今回は雪風です。

雪風は陽炎型駆逐艦の8番艦。1940年1月20日に竣工し、同型艦の「黒潮」「初風」「天津風」と共に第16駆逐隊を編成します。黒潮はすぐに「時津風」と交代し、以後この4艦で軽巡洋艦「神通」を旗艦とする第2水雷戦隊に属します。
太平洋戦争が始まると、最前線での空母の直衛を担うなど重要な位置で活躍します。各地の激戦を経て消耗してゆく多くの駆逐艦の中で雪風はほぼ無傷で生還します。一方で僚艦であった初風、時津風は沈没し、天津風も船体前半を喪失する損傷を受けたため雪風は軽巡洋艦矢矧を旗艦とする第10戦隊所属の第17駆逐隊(磯風・谷風・浜風・浦風)へ編入されます。やや隊内で浮いた存在になりつつもその後の激戦もかいくぐりますが、命令により代わりに救助に向かった艦が撃沈されたり、救助直前に救助対象が爆沈(横付けしていたら巻き添えになっていた)するなど、「運」による生還が目立ち始めます。1945年4月の坊の岬沖海戦では僚艦が全滅したため、同じく生き残った第21駆逐隊の「初霜」を加えるも、7月30日の宮津湾での空襲により初霜は戦没、同地で終戦を迎えました。
終戦後は武装を降ろして復員輸送艦として従事し、1946年12月28日までに1万3千人以上を輸送。その中には漫画家・水木しげるもいました。雪風はその後戦時賠償艦として中華民国に引き渡され、中華民国海軍旗艦「丹陽」となります。台湾に残されていた日本軍の武装を流用して再武装され、40口径八九式12.7cm連装高角砲や「長10cm」65口径九八式10cm連装高角砲、九六式25mm機銃などが搭載されましたが、補給の関係から米国式の38口径5インチ単装両用砲や50口径3インチ単装両用砲、ボフォース40mm機関砲などに換装されています。その後国共内戦を経て台湾に渡り、中国人民解放軍との戦いにも参加し戦果を挙げています。1965年に老朽化により退役し、練習艦となっていましたが1969年の台風で損傷し廃艦される事となり、1971年に解体されました。


さてウチに来た個体は単装機銃(H部品×2)が欠品していたハズレ品。なので単装機銃を他から調達してこなければなりません。


出来れば同じフジミのものが良かったのですが、金剛の余りが1個(右下)、扶桑?の余りが12個(中下)と13挺。もうちょっと欲しいので残りは他社で。左上はピットロードの駆逐艦キットの余り。右上はアオシマ大淀だったかな?左下はピットロードの不知火豪華版に付属のもので、若干小さめ。


フジミ雪風/浦風は2隻セットで半分は浦風に使ったので残りが雪風。連装/3連装機銃のF部品は2隻で共用。


今回は「本番」として一緒に買ったフジミのエッチングパーツ雪風用も使用します。


説明書。後マストの直後の機銃台の下にあるパーツの組み方が書いてなかったりと、やはり若干不親切。番号が間違っているのも1か所ほどあったので注意して組んで下さい。


エッチングパーツそのものは2隻セット用のためか2隻分あります。予備パーツと考えてもよいかもしれません。


それでは製作開始。手始めにエッチングパーツ全体にメタルプライマーを塗ります。エッチングパーツに塗装する場合、このプライマーを塗って被膜を作っておかないと塗料が食いつかず、切り離したり曲げたりしている間にバリバリ剥がれてきます。ただしプライマーを塗っていてもある程度は剥がれるので、そこは組み付け後にタッチアップ塗装しましょう。プライマーはクリア塗料のような使用感ですが、ニオイが強烈。臭い!


船体パーツを組んでゆきますが、艦首甲板は削る部分があるので後回し。


艦首甲板パーツは後面左右の階段と、艦橋の取りつく部分の前に3つ並んでいるホースリール(糸巻きみたいなボビン状のパーツ)、その前方、砲塔の取りつく部分の右後ろに1個あるホースリールをそれぞれ削り取っておきます。


艦首甲板を接着。煙突基部や艦首先端のフェアリーダーも取り付けておきます。


リノリウム部分を43ウッドブラウンで塗装。


残りを32軍艦色2で。


29艦底色で船体側面の下端をマスキング後に塗装。艦名デカールは無いので艦底に記名しておくと陽炎型の何だか分からなくなる事がありません。フルハルの場合はどうしましょう?


パーツを組みながらエッチングパーツを取り付けてゆきます。今回のエッチングパーツはこれまで使ったものとは違い、やけに柔らかくて切り離しや曲げがしやすい分、脆くて破損させやすいため細心の注意を払いながら作業する必要があります。フジミやピットロードのキットに付属のものはステンレス製ですが、今回のものは色をみるに真鍮なのでしょうか?


作業を進めてゆきます。全体的にパーツを左右貼り合わせる場面では穴に対しダボが太い傾向にあるので、ダボを細めて穴を拡げておけばピッタリ貼り合わせられます。


エッチングパーツの接着には普通のアロンアルフアを使っていたのですが、段々しんどくなってきたので買っておいたゼリー状瞬間を出してきて使ってみるとウソのように作業性が上がりました。最初からこちらを使う事を強くお勧めします・・・
画像奥は今回の一番の難所と思しきエッチングパーツによる13号電探。グチャグチャになってしまいました。


防弾板や手摺りを取り付ける前に単装機銃を配置します。ただ、雪風の1945年時の単装機銃の数はググってみるとどこでも14挺と書かれているのですが、説明書通り組むと18挺もあります。どこか4挺余分なのか?とアオシマ雪風1945の箱下面の図によると、艦首甲板の後端と、その後ろの左右で合計4挺が書かれていませんので、ここの4か所はオミットしておきました。(ただ、タミヤの1/350雪風だと艦首甲板後端には置かれているのですよね・・・)
それともう一つ、艦橋前の機銃台に置かれている機銃も、説明書では連装機銃ですがその後の図ではいつの間にか3連装になっており、ここもググって調べてみると3連装が正解のようす。タミヤ1/350雪風もフジミのちび丸雪風もここは3連装が鎮座しています。


防弾板と手摺りを取り付けてゆきます。フジミの那珂や名取では手摺りののりしろが独特で取り付けに苦労したものでしたが、こちらは点ではなく線ののりしろがあるので、ゼリー状瞬間による作業性もあって楽に取り付けられました。説明書だと艦橋左右の防弾板は長いものと短いものを2枚並べているように見えますが、実際には1枚です。防弾板は基本的に単装機銃の前に取り付くので、防弾板の無いところに取り付け指示のある単装機銃はやはり間違いなのかもしれません。




1番煙突左右に雪風固有の識別マークを貼り、旗も取り付けます。エナメルフラットブラックとジャーマングレーでウォッシングして完成。



苦労の甲斐あって上から見た時のみつしり感がたまらん・・・



手摺りがあると横からの見た目も豪華。現物は細すぎて見えないと言いますが、接写したりして近寄ってガン見するのにはやはり手摺りは見栄えを相当に引き上げます。



各部を観察。といっても陽炎型はもう4つ目、前回の浦風でも語ったので簡単に。
主砲塔は50口径三年式12.7cm連装砲塔(C型砲塔)。太平洋戦争中盤に対空兵装強化として艦橋前に機銃台を増設してここへ九六式25mm連装機銃を1基置いていましたが、雪風は戦争末期になって更に3連装へ換装していたようです。


艦中央部。戦争末期に1番煙突の左右面に識別用のマークがいくつかの艦に記され、雪風は三角のマークが記されました。


2番砲塔を撤去して跡地に3連装機銃を配置する改装が戦争後期に陽炎型までの駆逐艦に施されています。砲を撤去し機銃を配置する改装は軽巡洋艦の多くにも及び、敵航空機の攻撃には相当に頭を悩ませていた事がうかがえます。


右舷に回り艦尾。敵航空機に悩む一方で、海面下の敵、すなわち潜水艦にもかなり悩まされており、艦尾に集中して置かれている対潜装備にこの事が物語られています。第一次大戦の前くらいまでは敵はせいぜい水平面だけだったものが、その20数年後には完全に360度全方位から敵が迫るという事態に変わっていたのです。


全方位から迫る敵をいち早く察知するための装備として、前マストに増設された22号電探、後マスト前面に装着される13号電探、この他九三式水中探信儀(アクティブソナー)&聴音器(パッシブソナー)も装備されています。


艦橋の後部に陽炎型の竣工時~開戦時頃のものには見られない構造物が増設されていますが、ここは電探室だそうです。更にその後ろにも電探の部品庫が増設されています。


浦風(画像上)と。


浦風はエッチングパーツを使用していませんがそれでも防弾板など特徴的なパーツは省略されずに再現されています。ただやはり艦橋頂部などは情報量にかなり差があります。


単装機銃は欠品にふてくされて全部オミットしたものの、10個くらい余裕で調達できたので取り付けておけば良かったかなぁ・・・


いくつかのパーツはエッチングパーツに置き換えられているため詳細さはだいぶ違いますが、エッチングパーツじゃないからといって貧相かというと、そんな事もありません。


@@@



現在簡単に入手できる陽炎型の1/700キットとしてはフジミ雪風は最高難度といっても良いでしょう。これに更にやや扱いづらいエッチングパーツを加えると、「艦これで興味が出たので艦船キットは組んだ事ありませんが雪風のキットをエッチングパーツ込みで~」というYahoo知恵袋で見た発言がいかに無謀かつ蛮勇であるかが良く分かりました。初心者の方はアオシマが良いですが、あれもオプションパーツを盛り付ける前提な印象で素組みでは不満が残る部分が多くガッカリするかもしれません。雪風「だけ」欲しい人はタミヤの1/350が組みやすさも仕上がりも良好なのでそちらを強く勧めます。フジミのキットはどのジャンルも満足したかったら努力と根性を要求されると思って下さい。簡易な構成のキットはプロポーションやパーツ合わせがグズグズで大幅な改修が必要であったり、詳細なキットは必要以上にパーツを細分化し、組み順も頭をひねって考えなければならなかったり。それだけに完成させられれば満足度は高いです。

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