~趣味の世界~
ピットロード1/700スカイウェーブシリーズの駆逐艦照月(てるづき)1942です。
照月は秋月型駆逐艦の2番艦。時代が昭和に入り航空機の発達により艦隊の防空を担うための専用の艦が各国で模索され、イギリスにおいて旧式化したC級軽巡洋艦に対空兵装を主体とする防空巡洋艦としての改装を施したのを皮切りに新型艦としてダイドー級軽巡洋艦やアメリカのアトランタ級軽巡洋艦が建造され、日本海軍でも旧式化していた天龍型や5500t型の軽巡洋艦を防空巡洋艦へ改装する案が上がったものの、これらの艦に八九式12.7cm連装高角砲などの砲架は大した数が積めず効果的ではないとし、また多額の改装費をかけてもすぐ老朽化により置き換えが必要になるため新規に建造する計画を立てるものの結局は乗り気ではなく、代わりとして建造されたのが防空駆逐艦である秋月型駆逐艦です。
照月は太平洋戦争中である1942年8月31日に竣工、10月には1番艦「秋月」と共に第61駆逐隊を編成し、その月のうちにトラック島へ進出し第一線へと投入されます。第三次ソロモン海戦において沈没する戦艦「比叡」や「霧島」の救助を行い、その後ショートランド諸島に進出してガダルカナル島への輸送作戦に従事します。第2水雷戦隊旗艦として12月11日にショートランドを出撃し、航空機や魚雷艇の攻撃をしのぎつつ進撃するも魚雷艇の雷撃を受け大破、航行不能となったため乗員を駆逐艦「長波」・「嵐」に移乗後、翌12日に自沈処分されました。照月は秋月型駆逐艦の中では最初に喪失した艦となりました。
箱下面は塗装指示。
NEシリーズや艦底パーツが無く、箱の大きさの割に内容が少なく感じますが、これが元々のボリューム。
説明書。ランナーBとCが間違って記述されているところがあるので注意。(⑥のホーサーリールC24とC25はB24とB25が正しい)
主要パーツ群。というかこれが全部。パーツ点数は一見それなりにありますが余りパーツが結構多く発生します。このランナーには秋月型の後期の艦のパーツ、年代が後の方の装備などもふくまれており、秋月型には使わない12.7cm連装砲などのパーツも多く付属しています。デカールは照月のものしかありませんが、戦中は記名されていませんので実質これで秋月型のどの艦にも組めるようになっているのだと思います。
それでは製作開始。左右分割された船体と前甲板、後甲板で構成されており、艦底パーツはありません。
接着して縛りつけているところ。左右を合わせて甲板を乗せただけだと甲板左右に隙間が開きがちなので接着が固まるまで上と左右から押さえてやる必要があります。
まずはリノリウム色として43ウッドブラウンを塗装。塗装面に油膜が残っていたのか塗料が弾かれてしまったので一旦剥がすハメに。こういう事もたまにあります。(開封後にランナーごと中性洗剤で一旦洗う習慣を身につけておくと安心ですが、面倒だし、中々・・・)
32軍艦色2でそれ以外を塗り、船体側面の下1mmほどを29艦底色で塗装。艦底色で塗るところは線もなにも無いので箱の塗装指示を見て大体の位置を基準に。
パーツを乗せてゆきます。標準的なピットロード品質。難しいところは特にありません。
艦名デカールを貼った後にエナメルフラットブラック・ジャーマングレー・フラットブラウンでウォッシング&スミ入れし、最後に旗を付けて完成。
1942年仕様は武装盛り盛りになる前の時期なのでややあっさり目に感じるかもしれません。
船体側面はハッキリとしたディテールがあるため横からの見た目も良好。
各部を観察。主砲塔は「長10cm」65口径九八式10cm連装高角砲。この砲はすでに多くの艦に搭載されていた40口径八九式12.7cm連装高角砲を小口径・長砲身化したもので、小口径ながら長砲身化により射程の延伸がはかられています。一方で砲身命数が短く、砲塔の機構が複雑で量産に向いていないという欠点がありました。自動装填装置により毎分15発以上の連射速度をもっています。
艦中央部。対空に重点を置く艦のため当初の計画では魚雷装備を廃していましたが、結局は用兵側の要求により九二式61cm4連装魚雷発射管が1基のみ設置され、その後方には次発装填装置も装備されています。秋月型の特徴でもある誘導煙突は分岐が低い位置にあり、周辺の艤装でやや隠れ気味で「夕張」などに較べあまり目立ってはいません。3基の缶から集合されて1本にまとめられています。
艦後部。艦前方と同様に2基の砲塔が背負い式に配置されており、駆逐艦としては多い4基8門の砲門数を持ちます。艦橋頂部と3番砲塔の後ろに置かれた九四式高射装置により対空射撃にも対応しています。
右舷に回り艦尾。Y砲(九四式爆雷投射機)と装填台が2セット装備されており、艦尾左右に6基の爆雷投下台もあります。他の秋月型では後に爆雷投下軌条も装備されており、防空艦とはいえ対潜装備もおざなりにはされていません。
再び艦中央部。艦隊防空としては長10cmが主力ですが個艦防空の要となる機銃装備についてはまだ少数に留まっており、魚雷発射管の直前の架台に九六式25mm連装機銃が2基装備されているだけとなっています。
秋月型の3番艦「涼月(すずつき)」までは竣工時の時点では電探が装備されておらず、照月は喪失が早かったため最後まで電探装備はされていません。照月以外の秋月型では他の型の駆逐艦同様に13号、22号の電探が後に装備されますが、秋月型では大型の21号電探も装備されていました。ただしこの21号電探は重量が重く故障も多めだったためか、これを降ろして代わりに13号電探を装備した艦もありました。
アオシマ秋月(上写真奥側)と。装備状態がほぼ同じで、共に竣工時(1942年)と思って良いでしょう。
アオシマ秋月はウォーターラインシリーズからフジミが抜けた後に補う形で発売されたキットであり、パーツ点数が少なく組みやすい割にはそこそこ形になっているので初心者にもおすすめできますが、さすがにピットロードと比べてしまうとスカスカに見えてしまいます。特に船体側面はディテールアップのしがいがあります。
船体中央部の比較。アオシマの方も短艇のショボさが目立つものの割と頑張ってるように思えます。
ただ、アオシマの方は長10cmの砲身基部に本来無い白いカバーが付いていて雰囲気が違ってしまっているのが惜しいところ。
秋月型は全長が134.2mと駆逐艦としては大柄。小さ目の軽巡洋艦、天龍型(上画像下)や夕張(上画像上)と近いサイズになります。
同じ駆逐艦だと陽炎型(上画像上)や夕雲型(上画像下)が120m弱ですから一回りほど大きくなります。同時期に建造された駆逐艦には他に「島風」がありますが、これも129mとやや大きめになっています。陽炎型・夕雲型を「甲型駆逐艦」、秋月型を「乙型駆逐艦」、島風を「丙型駆逐艦」とも呼びます。甲型は従来通りの艦隊型駆逐艦、乙型は新しい思想である防空型駆逐艦、丙型はやや旧弊な戦術思想からなる重雷装・高速型の駆逐艦であり、要求性能も用途も本来は違う艦です。
@@@
難易度もそれほど高くない割にディテールの濃い満足度の高いキットです。ただもう少し盛り付けたのがいいなぁ・・・という方は年代が1944年以降の仕様のものを選んだ方が良いでしょう。
秋月型はアオシマ、ピットロードの他にもフジミのものもあり、そちらは特シリーズらしい難易度と濃ゆさでしょうから、増し増しなのが良いという方はそちらも気にしてみましょう。
照月は秋月型駆逐艦の2番艦。時代が昭和に入り航空機の発達により艦隊の防空を担うための専用の艦が各国で模索され、イギリスにおいて旧式化したC級軽巡洋艦に対空兵装を主体とする防空巡洋艦としての改装を施したのを皮切りに新型艦としてダイドー級軽巡洋艦やアメリカのアトランタ級軽巡洋艦が建造され、日本海軍でも旧式化していた天龍型や5500t型の軽巡洋艦を防空巡洋艦へ改装する案が上がったものの、これらの艦に八九式12.7cm連装高角砲などの砲架は大した数が積めず効果的ではないとし、また多額の改装費をかけてもすぐ老朽化により置き換えが必要になるため新規に建造する計画を立てるものの結局は乗り気ではなく、代わりとして建造されたのが防空駆逐艦である秋月型駆逐艦です。
照月は太平洋戦争中である1942年8月31日に竣工、10月には1番艦「秋月」と共に第61駆逐隊を編成し、その月のうちにトラック島へ進出し第一線へと投入されます。第三次ソロモン海戦において沈没する戦艦「比叡」や「霧島」の救助を行い、その後ショートランド諸島に進出してガダルカナル島への輸送作戦に従事します。第2水雷戦隊旗艦として12月11日にショートランドを出撃し、航空機や魚雷艇の攻撃をしのぎつつ進撃するも魚雷艇の雷撃を受け大破、航行不能となったため乗員を駆逐艦「長波」・「嵐」に移乗後、翌12日に自沈処分されました。照月は秋月型駆逐艦の中では最初に喪失した艦となりました。
箱下面は塗装指示。
NEシリーズや艦底パーツが無く、箱の大きさの割に内容が少なく感じますが、これが元々のボリューム。
説明書。ランナーBとCが間違って記述されているところがあるので注意。(⑥のホーサーリールC24とC25はB24とB25が正しい)
主要パーツ群。というかこれが全部。パーツ点数は一見それなりにありますが余りパーツが結構多く発生します。このランナーには秋月型の後期の艦のパーツ、年代が後の方の装備などもふくまれており、秋月型には使わない12.7cm連装砲などのパーツも多く付属しています。デカールは照月のものしかありませんが、戦中は記名されていませんので実質これで秋月型のどの艦にも組めるようになっているのだと思います。
それでは製作開始。左右分割された船体と前甲板、後甲板で構成されており、艦底パーツはありません。
接着して縛りつけているところ。左右を合わせて甲板を乗せただけだと甲板左右に隙間が開きがちなので接着が固まるまで上と左右から押さえてやる必要があります。
まずはリノリウム色として43ウッドブラウンを塗装。塗装面に油膜が残っていたのか塗料が弾かれてしまったので一旦剥がすハメに。こういう事もたまにあります。(開封後にランナーごと中性洗剤で一旦洗う習慣を身につけておくと安心ですが、面倒だし、中々・・・)
32軍艦色2でそれ以外を塗り、船体側面の下1mmほどを29艦底色で塗装。艦底色で塗るところは線もなにも無いので箱の塗装指示を見て大体の位置を基準に。
パーツを乗せてゆきます。標準的なピットロード品質。難しいところは特にありません。
艦名デカールを貼った後にエナメルフラットブラック・ジャーマングレー・フラットブラウンでウォッシング&スミ入れし、最後に旗を付けて完成。
1942年仕様は武装盛り盛りになる前の時期なのでややあっさり目に感じるかもしれません。
船体側面はハッキリとしたディテールがあるため横からの見た目も良好。
各部を観察。主砲塔は「長10cm」65口径九八式10cm連装高角砲。この砲はすでに多くの艦に搭載されていた40口径八九式12.7cm連装高角砲を小口径・長砲身化したもので、小口径ながら長砲身化により射程の延伸がはかられています。一方で砲身命数が短く、砲塔の機構が複雑で量産に向いていないという欠点がありました。自動装填装置により毎分15発以上の連射速度をもっています。
艦中央部。対空に重点を置く艦のため当初の計画では魚雷装備を廃していましたが、結局は用兵側の要求により九二式61cm4連装魚雷発射管が1基のみ設置され、その後方には次発装填装置も装備されています。秋月型の特徴でもある誘導煙突は分岐が低い位置にあり、周辺の艤装でやや隠れ気味で「夕張」などに較べあまり目立ってはいません。3基の缶から集合されて1本にまとめられています。
艦後部。艦前方と同様に2基の砲塔が背負い式に配置されており、駆逐艦としては多い4基8門の砲門数を持ちます。艦橋頂部と3番砲塔の後ろに置かれた九四式高射装置により対空射撃にも対応しています。
右舷に回り艦尾。Y砲(九四式爆雷投射機)と装填台が2セット装備されており、艦尾左右に6基の爆雷投下台もあります。他の秋月型では後に爆雷投下軌条も装備されており、防空艦とはいえ対潜装備もおざなりにはされていません。
再び艦中央部。艦隊防空としては長10cmが主力ですが個艦防空の要となる機銃装備についてはまだ少数に留まっており、魚雷発射管の直前の架台に九六式25mm連装機銃が2基装備されているだけとなっています。
秋月型の3番艦「涼月(すずつき)」までは竣工時の時点では電探が装備されておらず、照月は喪失が早かったため最後まで電探装備はされていません。照月以外の秋月型では他の型の駆逐艦同様に13号、22号の電探が後に装備されますが、秋月型では大型の21号電探も装備されていました。ただしこの21号電探は重量が重く故障も多めだったためか、これを降ろして代わりに13号電探を装備した艦もありました。
アオシマ秋月(上写真奥側)と。装備状態がほぼ同じで、共に竣工時(1942年)と思って良いでしょう。
アオシマ秋月はウォーターラインシリーズからフジミが抜けた後に補う形で発売されたキットであり、パーツ点数が少なく組みやすい割にはそこそこ形になっているので初心者にもおすすめできますが、さすがにピットロードと比べてしまうとスカスカに見えてしまいます。特に船体側面はディテールアップのしがいがあります。
船体中央部の比較。アオシマの方も短艇のショボさが目立つものの割と頑張ってるように思えます。
ただ、アオシマの方は長10cmの砲身基部に本来無い白いカバーが付いていて雰囲気が違ってしまっているのが惜しいところ。
秋月型は全長が134.2mと駆逐艦としては大柄。小さ目の軽巡洋艦、天龍型(上画像下)や夕張(上画像上)と近いサイズになります。
同じ駆逐艦だと陽炎型(上画像上)や夕雲型(上画像下)が120m弱ですから一回りほど大きくなります。同時期に建造された駆逐艦には他に「島風」がありますが、これも129mとやや大きめになっています。陽炎型・夕雲型を「甲型駆逐艦」、秋月型を「乙型駆逐艦」、島風を「丙型駆逐艦」とも呼びます。甲型は従来通りの艦隊型駆逐艦、乙型は新しい思想である防空型駆逐艦、丙型はやや旧弊な戦術思想からなる重雷装・高速型の駆逐艦であり、要求性能も用途も本来は違う艦です。
@@@
難易度もそれほど高くない割にディテールの濃い満足度の高いキットです。ただもう少し盛り付けたのがいいなぁ・・・という方は年代が1944年以降の仕様のものを選んだ方が良いでしょう。
秋月型はアオシマ、ピットロードの他にもフジミのものもあり、そちらは特シリーズらしい難易度と濃ゆさでしょうから、増し増しなのが良いという方はそちらも気にしてみましょう。