~趣味の世界~
タミヤ1/700ウォーターラインシリーズの軽巡洋艦五十鈴(いすず)です。


外箱は巡洋艦サイズですが厚みが無く、ピットロードの駆逐艦キットの箱とサイズが近いです。ウォーターラインシリーズの長良型はフジミの担当だったため、フジミが抜けた後ラインナップを補う形でタミヤが1993年頃にモデルアップしたものです。長良、名取、五十鈴、鬼怒がありこれらはフジミも古いキットをそのまま現在も売っていますが、五十鈴だけは2隻セットにしてリニューアルされています。一方タミヤの方ではモデルアップされていなかった阿武隈を追加しています。最近になって由良が変則的ではありますがアオシマから「劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC 霧の艦隊 軽巡洋艦ユラ」として発売されましたが、中身はタミヤ製で同シリーズのナガラにパーツを追加したもののようです。


五十鈴は長良型軽巡洋艦の2番艦。長良型軽巡洋艦は「5500t型軽巡洋艦」に含まれる大正年間に建造された水雷戦を重視した高速軽巡洋艦で、前型である球磨型と船体形状を同じくしながら装備を進化させた改良型です。五十鈴は1923年に就役。しかし太平洋戦争の頃には旧式化が否めず当初は小規模な作戦に従事、やがて戦局が進むと前線に駆り出されてゆき、時には第二水雷戦隊を率いて各地を転戦します。1943年12月に損傷のため本土へ帰還すると、かつて計画はされたものの棚上げされていた「防空巡洋艦」としての改装が行われます。1944年9月に改装が終了するとレイテ沖海戦を戦い、11月に輸送任務に従事中に米潜水艦の雷撃を受け損傷、スラバヤで修理を行います。1945年4月に修理が終わるとティモール島などの陸軍を撤収させる「二号作戦」に従事、多数の敵航空機の攻撃をかいくぐって任務を遂行するさなか、4月7日にスンダワ島を出航後に米潜水艦「ガビラン」と「チャー」の雷撃を受け沈没します。


箱の薄さ相応に内容も少なめです。


説明書。甲板の塗装指示がやや説明不足に感じます。


主要パーツ群。ランナー一枚と船体、艦底、バラスト、シール。静模のディテールアップパーツは付属しません。


艦底パーツには1973の刻印があります。その上に書かれている31316は球磨の品番なのでこのパーツは球磨型のものを流用しているようです。


船体パーツの方には1993の刻印がありますが、併記されている31322は長良の品番なのでこのパーツは長良と共通のようす。


それでは製作開始。艦底パーツにバラストを乗せ、船体と接着・・・する前に、魚雷発射管周辺の塗装をしておかなければなりません。


魚雷発射管の置かれている部屋は前後に壁がありますが下はバラストが銀色に輝いているので32軍艦色2で塗っておきます。


船体と艦底パーツを接着。パーツ合わせは接着剤を流すためにわざわざ開く必要があるくらいピッタリしています。次はウェルデッキ。


ウェルデッキにかぶせるパーツはやや合いが悪いので前後の隙間を埋めてやりたいところです。


甲板後半に取り付けるセルター甲板にはリノリウム押さえモールドがなぜかここだけ無いので伸ばしランナーを貼ってやります。余った伸ばしランナーで上のウェルデッキ前後の隙間も埋めました。このセルター甲板もやや合いが悪くて前方の甲板との間に隙間が開くのでその部分にも伸ばしランナーを貼って埋めてやると良いでしょう。


甲板とセルター甲板をリノリウム色として43ウッドブラウンで塗装。


残りを32軍艦色で塗り、艦底部分を29艦底色で塗ります。


パーツを取り付けてゆきます。タミヤのキットらしく作業性は良好。ただしリノリウム押さえモールドが邪魔をして艦橋や煙突などのパーツがピッタリとしない傾向にあるので、パーツが乗る部分のリノリウム押さえモールドは削ってやった方がスマートかもしれません。


パーツを載せ終えたところ。タミヤ製は楽だね・・・


さてキットにはやる気のない造形の単装機銃が付属するのですが、説明書には取り付け指示がありません。折角なので取り付けておきたいもの。


ググって他所の作例を見るに、単装機銃の個数は5挺。艦首に1挺、2番砲塔跡地の左右に2挺。


セルター甲板後端の左右の下甲板に2挺。ところでこの船体パーツは長良と共通のため後甲板には機雷敷設軌条がついたままなのですが、五十鈴には本来ありません。ハセガワのキットだったらここは「削れ」って指示になってるかも。リノリウム押さえモールドと交差しているので実際削るとなると結構大変かもしれません。




エナメルフラットブラック、ジャーマングレー、フラットブラウンでウォッシングして完成。



三連装機銃の防弾版とか、色々不足気味ですがパリッとしているタミヤらしいキット。



船体側面もそれなりにモールドがあるので低い視点からの見た目も悪くありません。



各部を観察。防空巡洋艦としての改装の際に元々装備されていた50口径三年式14cm単装砲は7基全部が撤去され、跡地には3基の40口径八九式12.7cm連装高角砲が設置されました。この高角砲は対空・対艦両用砲であり、同じ12.7cmでも駆逐艦用の50口径三年式12.7cm連装砲より初速・射程が劣るものの半自動装填により連射速度が高く、毎分14発(三年式12.7は10発)。大は大和型戦艦、小は松型駆逐艦など多くの艦に搭載された砲ですが、実際の運用では砲架の旋回速度が遅く航空機の速度に追従できないなど能力不足だったと言われています。後継砲として「長10cm」こと65口径九八式10cm連装砲ならば多くの点で性能が上回っていましたが、それもまた生産性が低く数を揃えられなかったのかもしれません。


艦中央部。長良型までの5500t型軽巡洋艦の特徴的な3本煙突。その後方には2番砲架があります。その下になる左右舷には魚雷発射管の横穴があり、ここには八年式連装魚雷発射管がありましたが改装により九二式4連装魚雷発射管に換装されており、九三式酸素魚雷の使用も可能になっています。


艦後部。セルター甲板上の砲塔やカタパルトは撤去されており、後端の7番砲塔跡地に3番砲架があります。後部マストには22号電探と13号電探が装備されているのが確認できます。


右舷に回り艦尾。五十鈴は改装時に対空だけでなく対潜能力も強化されており、セルター甲板左右から艦尾にかけて敷かれていた機雷敷設軌条を撤去(キットでは残っています)し、艦尾に爆雷投下軌条を2条設置しています。他、爆雷投射機や水中聴音器・探針儀といった各種ソナーも備え、これをもって改装中に対潜掃討部隊である第31戦隊の旗艦に編入されていましたが、結局は対潜掃討任務に就く事はありませんでした。


再び艦中央部。防空巡洋艦らしく対空機銃も多く搭載されており、九六式25mm三連装機銃が各所に11基、単装機銃が5挺装備されています。


艦橋頂部には特徴的な21号電探が装備されています。マストと1番煙突の間の甲板の位置には1段下がったウェルデッキとそこに鎮座する連装魚雷発射管がありましたが、改装によりウェルデッキは埋められて兵員室となっています。余談ですがこの兵員室はその真下にある機関の熱のために蒸し暑く居住性が非常に悪かったと言われています。



同じ長良型の3番艦・名取と。


名取は五十鈴とは違い通常の改装のみ行われ最後まで「普通の」軽巡洋艦でした。キットはフジミのもので羅針艦橋の窓がシールだったりとかなり古さが目立ちますが、所々雰囲気はタミヤのものに負けていない部分もあります。


艦中央部の比較。長良型では当初艦橋下の格納庫より前に伸びる滑走台を利用して艦載機を発進させていましたが、五十鈴に「萱場(かやば)式艦発促進装置」と呼ばれる、スプリング式のカタパルトが装備されて発艦試験が行われ、後にその装置は由良に移設されて4年間の長期運用試験が行われました。結局は鬼怒→神通で試験されていた火薬式のカタパルトが主流になり、名取には火薬式の呉式二号カタパルトが装備されています。(五十鈴は改装前にカタパルトを装備していたのかどうかググってもよくわかりません・・・)


艦尾の比較。名取は最終的には5番と7番砲塔が撤去され、五十鈴と同様にセルター甲板の後端に40口径八九式12.7cm連装高角砲が設置されます。五十鈴の改装前は名取と同様の形だったのかもしれません。(鬼怒などはセルター甲板の形が少し違います)



同タミヤの球磨と。


準同型に近いとはいえ違う型の艦ですが、キットのディテールは全く同じ部分がそこかしこに見受けられ、球磨→長良→五十鈴という流れが感じられます。


艦橋は全然形がちがいますが、どこを見てもそこから五十鈴の形に変わっていく流れが見て取れます。


同じタミヤの長良と並べたら更にもっと似ているのでしょう。



5500t型球磨から那珂までのうち5艦。上から球磨、名取、五十鈴、川内、那珂。



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5500t型のキットはどの艦もそれぞれ年代が変えられていたりして個性が与えられている場合が多く、似ているようでちゃんと違いが楽しめるように感じられます。
五十鈴のキットはタミヤの他にも同スケールでフジミ、1/350でもアオシマが出しており、それぞれに特色があると思います。今回のタミヤの1/700五十鈴は組みやすくパーツ点数も少ないので初心者にもおすすめできるでしょう。ただ少し物足りなさは感じたのでいくつか組んできている方にはフジミの方が向くかも。



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