~趣味の世界~
ハセガワ1/700ウォーターラインシリーズの駆逐艦樅(もみ)です。
バラしてしまうと順序的には次はフジミ雪風/浦風をエッチングパーツ込みでやるつもりだったのですが、どうにも「面倒臭い・・・」が先に立ってしまい積まれたキットが崩せないので小さくてラクそうなのを先にやってしまおうという流れ。
箱はおなじみ小さな駆逐艦サイズの箱。
樅(もみ)は樅型駆逐艦の1番艦。明治末期において日本海軍では駆逐艦の数をとにかく揃える必要に迫られ、通常サイズの駆逐艦(一等駆逐艦)と建造費の安い小さな駆逐艦(二等駆逐艦)とのハイローミックス運用を採っていました。英国のトライバル級駆逐艦を参考に建造された一等駆逐艦の海風型のスケールダウン版である桜型二等駆逐艦とその改良型に代わり日本独自の設計による駆逐艦として建造されたのが一等駆逐艦の峯風型と、そのスケールダウン版で二等駆逐艦の樅型が大正期に建造されました。樅はその1番艦として1919年に竣工し、初代の艦長は後の真珠湾攻撃時の第一航空艦隊司令長官で有名な南雲忠一でした。樅はその後1932年に退役し1936年には標的艦として生涯を閉じていますが、樅型駆逐艦は太平洋戦争時には完全に旧式化しており多くが練習艦や哨戒艇として余生を送っていたため楡(にれ)・栗・竹・柿・藤・蓮・菫(すみれ)など比較的多くが終戦まで生き残りました。
箱下面は塗装指示。
開封。静模のディテールアップパーツが無いのでボリューム自体は少なめですが、艦の大きさを考えると多めに盛られています。
説明書。ハセガワのインストはカッチリしていますね。
パーツ全部。船体パーツのランナーとつながっているBランナー(中央左)は手前左と同じもの。
艦自体は天龍型軽巡洋艦と同時期で古い艦ですが、キット自体は90年代のもので比較的新しく、ディテールは形のよく似た同じハセガワの睦月型と比べてもはるかにカッチリしています。
Zランナーは第一号型哨戒特務艇。
それでは製作開始。船体はシンプルな2パーツ構成。船体側面の舷窓は窓枠のみが凸モールドで表現されておりちょっと目立たないのでピンバイスで掘ってみました。
仮組み時点では艦底パーツとの間のスキマが気になるのですが、接着すると埋まってほぼ気にならなくなります。
リノリウム色を塗装。塗装指示では41レッドブラウンですがイメージと違うので43ウッドブラウンで。1号哨戒艇の甲板もレッドブラウン指示ですが木甲板モールドがあるので44タンにしました。
32軍艦色2を塗装。
マスキングをして艦底色を。
パーツはハセガワらしい細かさですが難易度的には大した事はありません。サクサク組み上げられます。
ゲート跡のレタッチや細かい塗装が済んだところ。あえて苦戦しやすい点を挙げるなら単装砲の防盾の角度調整でしょうか?砲ごとグニャッと曲がって思った角度になるまでちょっとイラッとするかも。
デカールを貼ったところ。透明部分が多いですが切り飛ばしてやれば問題なし。扱いやすい素直なデカールです。
エナメルフラットブラック・フラットブラウン・ジャーマングレーなどでスミ入れやウォッシングをして完成。
小さくても情報量が多く、内容が詰まっています。
ただ、この小ささですから更にディテールアップ、というのも大変でしょう・・・
各部を観察。同時代の駆逐艦・軽巡洋艦と同様のスプーン型艦首を持ちます。船首楼の上には主砲となる45口径三年式12cm単装砲が配置されます。防盾は前面と側面のみで、上面と後面は開いています。その直後のT字型のものは三年式6.5mm機銃。更にその後ろの一段下がったウェルデッキには六年式53cm連装水上発射管。この魚雷発射管は球磨型軽巡や峯風型のものと同じタイプです。
ウェルデッキの直後には峯風型~睦月型の改装前と似た特徴的な形状の艦橋があります。艦橋の後ろはマスト・煙突・2番砲塔・煙突・機銃・連装魚雷発射管と続きます。艦のなりは小さいですが機関は21500馬力を発揮する重油専焼缶とオールギヤードタービンが奢られており、速力は後の駆逐艦に負けない36ノットを誇ります。
2番魚雷発射管の後ろは後部マスト・3番砲と続き、艦尾には2本の機雷敷設軌条があります。
右舷側へ。艦尾の甲板上の配置物はググると生き残った艦ほど新しめの配置物(掃海具や爆雷投下台、機銃等々・・・)が増えるようです。
樅は早々に退役しますが他の樅型の多くは太平洋戦争直前の時期に魚雷の全てと砲1門を撤去して兵員室を増設した高速輸送艇ともいえる第31号型哨戒艇へ改装され、戦中の揚陸作戦などに投入されました。
しかし揚陸作戦においては強引に擱座させられるなど荒っぽい使用で使い捨てられる艇もありやや不幸な末路を辿る傾向にありました。無事終戦を迎えたのに台風や触雷などで終戦直後に沈んだ艦もあります。
第一号型哨戒特務艇。全長28.5m、排水量250tほどの木造の哨戒艇で、1944年に建造され27隻ほどが完成したとあります。400馬力ほどのディーゼル機関により速力は9ノットと遅いですが完成が終戦間際であったため大半が生き残り、その後海上保安庁や海上自衛隊に継承された艇もありました。
兵装は九六式25mm機銃が連装1基・単装2挺、爆雷投下軌条、13号電探がキットの外観からも確認できます。その他12cmロケット砲や魚雷落射台なども装備していました。樅と並べるにはちょっと年代がチグハグな印象です。
神風型駆逐艦・疾風(画像奥側)と。単純に峯風型の全長を詰めただけかと思ったら、スケールそのものが違うような印象。
幅もかなり差があり、艦橋なども形は似ていますがかなり幅が詰められています。
厳密には違いますが二等駆逐艦のように扱われていた松型駆逐艦(画像奥側)と。サイズ的には他よりも近づきますがまだまだ大きい。
同じ駆逐艦でも大柄な秋月型と。駆逐艦と巡洋艦が並んでるように見えます。
@@@
小さいですが趣深い樅。初心者にはそもそも興味を持ちにくい艦かもしれませんが、小さい割に情報量が多く、比較的組みやすいキットです。大きい艦との対比を楽しみたい方や駆逐艦を極めたい方に。
バラしてしまうと順序的には次はフジミ雪風/浦風をエッチングパーツ込みでやるつもりだったのですが、どうにも「面倒臭い・・・」が先に立ってしまい積まれたキットが崩せないので小さくてラクそうなのを先にやってしまおうという流れ。
箱はおなじみ小さな駆逐艦サイズの箱。
樅(もみ)は樅型駆逐艦の1番艦。明治末期において日本海軍では駆逐艦の数をとにかく揃える必要に迫られ、通常サイズの駆逐艦(一等駆逐艦)と建造費の安い小さな駆逐艦(二等駆逐艦)とのハイローミックス運用を採っていました。英国のトライバル級駆逐艦を参考に建造された一等駆逐艦の海風型のスケールダウン版である桜型二等駆逐艦とその改良型に代わり日本独自の設計による駆逐艦として建造されたのが一等駆逐艦の峯風型と、そのスケールダウン版で二等駆逐艦の樅型が大正期に建造されました。樅はその1番艦として1919年に竣工し、初代の艦長は後の真珠湾攻撃時の第一航空艦隊司令長官で有名な南雲忠一でした。樅はその後1932年に退役し1936年には標的艦として生涯を閉じていますが、樅型駆逐艦は太平洋戦争時には完全に旧式化しており多くが練習艦や哨戒艇として余生を送っていたため楡(にれ)・栗・竹・柿・藤・蓮・菫(すみれ)など比較的多くが終戦まで生き残りました。
箱下面は塗装指示。
開封。静模のディテールアップパーツが無いのでボリューム自体は少なめですが、艦の大きさを考えると多めに盛られています。
説明書。ハセガワのインストはカッチリしていますね。
パーツ全部。船体パーツのランナーとつながっているBランナー(中央左)は手前左と同じもの。
艦自体は天龍型軽巡洋艦と同時期で古い艦ですが、キット自体は90年代のもので比較的新しく、ディテールは形のよく似た同じハセガワの睦月型と比べてもはるかにカッチリしています。
Zランナーは第一号型哨戒特務艇。
それでは製作開始。船体はシンプルな2パーツ構成。船体側面の舷窓は窓枠のみが凸モールドで表現されておりちょっと目立たないのでピンバイスで掘ってみました。
仮組み時点では艦底パーツとの間のスキマが気になるのですが、接着すると埋まってほぼ気にならなくなります。
リノリウム色を塗装。塗装指示では41レッドブラウンですがイメージと違うので43ウッドブラウンで。1号哨戒艇の甲板もレッドブラウン指示ですが木甲板モールドがあるので44タンにしました。
32軍艦色2を塗装。
マスキングをして艦底色を。
パーツはハセガワらしい細かさですが難易度的には大した事はありません。サクサク組み上げられます。
ゲート跡のレタッチや細かい塗装が済んだところ。あえて苦戦しやすい点を挙げるなら単装砲の防盾の角度調整でしょうか?砲ごとグニャッと曲がって思った角度になるまでちょっとイラッとするかも。
デカールを貼ったところ。透明部分が多いですが切り飛ばしてやれば問題なし。扱いやすい素直なデカールです。
エナメルフラットブラック・フラットブラウン・ジャーマングレーなどでスミ入れやウォッシングをして完成。
小さくても情報量が多く、内容が詰まっています。
ただ、この小ささですから更にディテールアップ、というのも大変でしょう・・・
各部を観察。同時代の駆逐艦・軽巡洋艦と同様のスプーン型艦首を持ちます。船首楼の上には主砲となる45口径三年式12cm単装砲が配置されます。防盾は前面と側面のみで、上面と後面は開いています。その直後のT字型のものは三年式6.5mm機銃。更にその後ろの一段下がったウェルデッキには六年式53cm連装水上発射管。この魚雷発射管は球磨型軽巡や峯風型のものと同じタイプです。
ウェルデッキの直後には峯風型~睦月型の改装前と似た特徴的な形状の艦橋があります。艦橋の後ろはマスト・煙突・2番砲塔・煙突・機銃・連装魚雷発射管と続きます。艦のなりは小さいですが機関は21500馬力を発揮する重油専焼缶とオールギヤードタービンが奢られており、速力は後の駆逐艦に負けない36ノットを誇ります。
2番魚雷発射管の後ろは後部マスト・3番砲と続き、艦尾には2本の機雷敷設軌条があります。
右舷側へ。艦尾の甲板上の配置物はググると生き残った艦ほど新しめの配置物(掃海具や爆雷投下台、機銃等々・・・)が増えるようです。
樅は早々に退役しますが他の樅型の多くは太平洋戦争直前の時期に魚雷の全てと砲1門を撤去して兵員室を増設した高速輸送艇ともいえる第31号型哨戒艇へ改装され、戦中の揚陸作戦などに投入されました。
しかし揚陸作戦においては強引に擱座させられるなど荒っぽい使用で使い捨てられる艇もありやや不幸な末路を辿る傾向にありました。無事終戦を迎えたのに台風や触雷などで終戦直後に沈んだ艦もあります。
第一号型哨戒特務艇。全長28.5m、排水量250tほどの木造の哨戒艇で、1944年に建造され27隻ほどが完成したとあります。400馬力ほどのディーゼル機関により速力は9ノットと遅いですが完成が終戦間際であったため大半が生き残り、その後海上保安庁や海上自衛隊に継承された艇もありました。
兵装は九六式25mm機銃が連装1基・単装2挺、爆雷投下軌条、13号電探がキットの外観からも確認できます。その他12cmロケット砲や魚雷落射台なども装備していました。樅と並べるにはちょっと年代がチグハグな印象です。
神風型駆逐艦・疾風(画像奥側)と。単純に峯風型の全長を詰めただけかと思ったら、スケールそのものが違うような印象。
幅もかなり差があり、艦橋なども形は似ていますがかなり幅が詰められています。
厳密には違いますが二等駆逐艦のように扱われていた松型駆逐艦(画像奥側)と。サイズ的には他よりも近づきますがまだまだ大きい。
同じ駆逐艦でも大柄な秋月型と。駆逐艦と巡洋艦が並んでるように見えます。
@@@
小さいですが趣深い樅。初心者にはそもそも興味を持ちにくい艦かもしれませんが、小さい割に情報量が多く、比較的組みやすいキットです。大きい艦との対比を楽しみたい方や駆逐艦を極めたい方に。