~趣味の世界~
タミヤ1/700ウォーターラインシリーズの軽巡洋艦矢矧(やはぎ)です。


矢矧は太平洋戦争開戦後に竣工した帝国海軍の軽巡洋艦としては最後の型となる阿賀野型軽巡洋艦の3番艦。帝国海軍の軽巡洋艦は大正期の川内型以来長く建造されておらず旧式艦ばかりだったため、太平洋戦争開戦前の1939年のマル4計画(戦艦大和や空母大鳳などもこの計画による建造です)により6隻の軽巡洋艦の建造が計画され、この内の4隻が阿賀野型軽巡洋艦、残り2隻が大淀型軽巡洋艦として建造が計画されました。
従来の5500t型軽巡洋艦よりも一回り大きいですが世界的な流れに沿うとかなり余裕の無い艦サイズであり、武装も最初から近代化されているものの20年の間に戦術も移り変わっており水雷戦を主な目的とする本艦も航空戦主体の時代ではやや時代遅れとなっていました。
竣工し就役した時期はすでに太平洋戦争の中盤を過ぎており、阿賀野型軽巡洋艦の1番艦阿賀野は早々に戦没、2番艦の能代もそこそこ頑張ったものの戦没、4番艦の酒匂に至っては就役が遅すぎて戦う機会無く無傷のまま終戦を迎えましたが、3番艦の矢矧は戦争の終盤の数々の戦場で活躍し、末期の坊ノ岬沖海戦で戦艦大和の最後を見届けつつ大量の砲弾と魚雷を浴びて沈みました。


とまあカッチョイイ経歴だけにそこそこメジャー艦ではあるのでウォーターラインシリーズのナンバリングもNo.63とそこそこ古く、ナンバー改定後のNo.315となっていますが内容的にはディテールアップパーツが追加されただけのもののようです。

 
説明書。ナンバー改定された時期である1994の年号が見えます。それですらもう20年も前なのですね・・・


メインパーツの袋を開封。船体パーツは甲板と一体ですが船体側面にもディテールが結構あって割としっかりしています。


艦底パーツに1972の数字が・・・40年以上前!


船首の甲板によくある鉄板ディテールは無くつるりとしていますが、まあアレはどちらかといえばオーバーディテールなので無くても別に・・・それより後ろの甲板上のディテールもリノリウム押さえの横方向のモールドが薄めでこれはこれでスケール準拠のリアルさといえるかもしれません。


さっそく艦底パーツを船体パーツと貼り合わせます。バラストは艦底パーツの上に置いて船体パーツと挟むだけで大体固定されます。ただ船体パーツは反っているので少し戻してやらないと不格好。セラミックヒーターの温風にあてて少しずつ戻してやりますが少し反り戻ってしまいました。あまり熱風に晒すとぐにゃぐにゃになり悲惨な事になるのでそっと、ちょっとずつ。やんわりと。


いつも通りに大まかな塗装をしたところ。リノリウム色(43ウッドブラウンに色々混ぜたもの)で甲板を塗り、他を32軍艦色2、艦底を29艦底色。他にはタン、つや消しの白と黒。水上機があるのでこれは上面を緑、下面を明灰白色で塗ります(ウチの場合は適当に似た色で、15暗緑色と11ガルグレー)。主要パーツのディテールはディテールアップパーツに負けていないレベルのもので、本当に72年製?って感じ。なのでディテールアップパーツからパーツを出すまでも無いのであちらは袋から出しませんでした。阿賀野型は搭載砲が独特なので流用出来ないのも理由にあります。


パーツ構成はシンプルで状態も良いのでサックリと組み進められます。注意点としては煙突の後ろにある水上機の駐機台となるフライングデッキを取り付けるとその下の空間に手が入らなくなるのでここは後にした方が良いのと、説明書だと最初の方に取り付け指示のある煙突側面に付く水上機のフロートが駐機台の取り付けの妨げになるのでこれも後に。それ以外は特に難しいところが無く、非常に組みやすいキットです。


フライングデッキを取り付ける前に甲板上のウォッシングをしておきます。いつも通りエナメルジャーマングレー。ここを後で取り付ける辺りは水上機母艦の千代田を思い起こされます・・・


フライングデッキを接着後、カタパルトを取り付け(差し込んで保持力があるなら接着しなくても可)、水上機も細かく塗装しておきます。水上機は零式三座水上偵察機。塗装はググって出た画像を参考にした方が早いでしょう。細かく塗る価値のある、非常に緻密なディテールの零式水偵です。




珍しく水上機を載せる台がカタパルト上にあるのでそこへ1機接着し、もう1機をフライングデッキへ置きます。
全体をウォッシングして完成。年内に間に合いました。



やはりそこそこ大きい艦はタミヤの底力を感じます。恐ろしいのは他メーカーが最近になってやっと追いついたレベルを70年代に繰り出しているところ・・・旧態依然とか慢心とかよく囁かれますが「作りやすさ」は今でもトップレベル。



目線を下して観察。軽巡洋艦ですが5500t型とはまた違った、重巡に近い印象のフォルム。

 
重巡と決定的に違うのは艦の幅でしょうか。この点では軽巡の細長さの範疇にあります。


艦首~艦橋。主砲は50口径四一式15cm砲。金剛型を国産化した際に一緒に持ち込まれた副砲の毘式15.2cm速射砲を連装にしたものなので実はあまり新しいものでは無い(毘式15.2cm砲の改良型が三年式14cm速射砲ですから・・・)のですが、ささやかな近代化として仰角は30度から55度に引き上げられていますが、人力装填砲であり、元々15.2cm砲弾が装填作業を行うには重すぎるということで14cmに軽減していたものをまた元に戻したのですから連射速度は毎分6発と平凡なものになっています。また装填出来る角度が決まっており、対空射撃時には装填の度に仰角7度まで戻さなければならないなど、実用面でも問題が残されていました。


砲は可動させられます。砲塔の旋回も差し込んだ時に保持力が得られればそのまま可動させられるでしょう(今回は1番砲塔だけ緩かったので接着してあります)。この砲塔は見た目が角ばっていてゴツいですが実は軽量化のためか装甲が破片防御程度しかなく、2番砲塔の射撃の衝撃で1番砲塔内の電灯が消えるなど、剛性にも問題があるものでした。2番砲塔に後ろには単装機銃が2基ありますが、矢矧の機銃は三連装10基&連装4基ともあり、また単装が10~20で防盾付きだったりと時期や考証の違いがありそうです。艦橋の前には三連装機銃が2基あります。


艦橋周辺。艦橋の左右舷にはこれまた独特な60口径九八式8cm連装高角砲があります。これは「長10cm」65口径九八式10cm連装高角砲の軽量小型版なのですが、長10cmの欠点(低威力・高コスト・砲身の寿命が短い)をそのまま引き継いでしまった失敗作で、阿賀野型のみの搭載兵装となっています。艦橋周辺には各種電探のアンテナが並び、艦橋上左右に1つずつの22号、その間に21号、その後方、マストに後ろ向きに13号の電探のアンテナが確認できます。


煙突より後方。煙突は甲板中部に邪魔臭そうに複数の筒状煙突が真っ直ぐ立っていた5500t型とは違い近代的な誘導煙突。そのため甲板中部を広く活用できるようになっているのがわかります。61cm4連装魚雷発射管を2基置いた上にフライングデッキを載せ、その後方に呉式二号五型射出機を設置しています。5500t型では無理やり置いたカタパルトの上に水上機1機を置くだけなので搭載数は1だったものがフライングデッキを設置する事で搭載数は2機に増えました。フライングデッキ上の四隅には九六式25mm3連装機銃が設置されています。


艦尾。後部マストの根元左右に3連装機銃、その後方に3番砲塔、さらにその後方には2基の3連装機銃が設置されています。さらにさらにその後方の左右に爆雷投下軌条があります。


サイズ比較。上から重巡足柄、以下軽巡の矢矧、名取、那珂、夕張、鹿島。全長は174.5mで200mオーバーの足柄と比べるとさすがに小さいですが重巡でも古鷹型や青葉型の185mと5500t型の162mとの中間的な全長となっています。


左から那珂、矢矧、足柄。幅は5500t型と大差ありません。甲板上の配置は重巡を彷彿とさせるものの艦形は軽巡の形を踏襲しています。ただ甲板上の配置の傾向に関しては甲板に段が多い形状は昭和初期までの艦全部に見られ、それ以降は平らな甲板になりつつあったので設計年次の違いによるものかもしれません。


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古いキットですがディテールはかなりのレベルにあり、組みやすさもあって初心者にもオススメできるものです。物足りないという向きにはエッチングパーツで補完かな?




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