~趣味の世界~
フジミ1/700特シリーズの軽巡洋艦北上です。


フジミの特-85北上はキット年次が2014年と新しいキットです。北上のキットはピットロードの重雷装艦時代(太平洋戦争開戦直前~戦争序盤)の仕様のものがありましたが、こちらは太平洋戦争最末期の回天搭載母艦となった時期の仕様となっています。


北上は球磨型軽巡洋艦の3番艦。5500t型軽巡洋艦の初期の艦として1921年に竣工後は他の球磨型と同様に特に大きな戦役もなく戦間期を過ごします。そして20年が過ぎ、太平洋戦争開戦に向け緊張が高まってくるとこの頃の日本海軍では「艦隊決戦」に固執しており、多量の酸素魚雷を一斉射して敵戦力を漸滅する「重雷装艦」への改装が旧式であり余剰戦力となっていた北上に行われます。1941年9月には改装が完了し40発もの魚雷の投射能力を得ましたがいざ開戦となってみるとこれを生かす機会は無く、ミッドウェー海戦からの帰還後に今度は「高速輸送艦」として魚雷発射管を24門に減らした代わりに兵員室や大発動艇4隻の搭載能力を付加する改装を受けます。その後すぐに更に魚雷発射管を16門に減らし大発動艇の搭載能力を増やし、各地を転戦します。1944年1月にマラッカ海峡にて英潜水艦の雷撃を受け、セレター軍港などで修理を受けつつ本土へ戻る船団と合流して佐世保へ帰還すると今度は「人間魚雷・回天」の搭載母艦としての改装を行います。同時に搭載兵装も通常の魚雷を全て廃し高角砲や機銃・電探など対空寄りの兵装に載せ換えられ、1945年1月に改装が完了するも出撃の機会はなく、3月の呉軍港空襲では損傷を受けなかったものの7月の空襲で大破し、そのまま終戦を迎えます。戦後は航行不能状態だったため鹿児島に曳航されて復員輸送支援工作艦として半年間従事し、1946年10月に長崎で解体されました。


開封。ボリュームはそこそこありますが前回のハセガワ龍田ほどではない印象。





説明書。畳むと1ページがB5版となる長い1枚紙。昭和19年と昭和20年の2つの仕様を選択して組むようになっていますが、19年の仕様といっても改装中の仕様?前述のように回天搭載母艦として改修が済むのは昭和20年1月で、19年に佐世保で改装が始まる前はまだ主兵装は14cm単装砲4基と4連装魚雷発射管4基だったようです。キットの19年仕様は軌条に回天が載っておらず、単装機銃4挺の代わりにカッター2艘が載っているくらい。


ランナーを小袋から全て出したところ。やや小さいまとまりが多い傾向にありますが、武装パーツを除くとあとはシンプルにまとまっています。


モールドは新しいキットらしい詳細なもの。塗り分けはやや面倒ですが仕上がりのみつしり感と引き換え。出来上がってみたら何かスカスカ・・・というくらいならこのくらいの手間で満足できた方が良いです。


デカールは旭日旗のみ。



それでは組みにかかりましょう。船体は側面が左右一体化したものと艦底との組み合わせ。


フジミに多いタイプですが船体と艦底の合わせ目が底面にあり、側面の処理をしなくてよいものの接着剤を流しにくい印象。


船体と艦底を接着したら速やかに甲板を。甲板パーツは段になっている中央部で前後に別れています。


後半部は昭和20年仕様にする場合先に穴を開けておく必要があります。ピンバイスの刃は0.5mmで丁度良いでしょうか。ドリル刃はセットだと1mmくらいが最小だったりして艦船キットの舷窓などを開けるには少し大きいので0.5mmやできれば0.3もあると便利。ただ0.5mm以下の細いものは折れやすいのでタミヤが出してるやつみたいに軸だけ太いタイプの刃が安心でしょうか。あれも深い穴が掘れないので万能ではありませんが・・・


甲板パーツを後半から先に接着し、次に前半を接着します。


甲板パーツと側面との間に隙間が開きやすいので平らな当て板を底面に当てて輪ゴムで縛ります。艦底の接地性は少し中央部が浮いてしまう傾向にあり、無理に修正しようとすると中央部分で割れる危険があるので無理して修正しようとしない方がよいでしょう。フジミのキットはダボの位置がキッチリ合っていなかったりして大抵組んだ状態でどこかしらにテンションが掛かっていがちなので組み始めでキッチリ接地するようにしても組みあがったら浮いていたり後で浮いてきたりするのであまり神経質になるとキリがありません。


リノリウム色として43ウッドブラウンを塗ります。塗る部分は段の高い前半部分だけ。前回薄めすぎたので41レッドブラウンをいくらか混ぜてみたら見慣れた色味になった印象。


32軍艦色2を塗ります。細かく塗り分ける必要があるので焦らずチマチマと進めます。


説明書ではいきなり回天や単装機銃から置き始めますが構造物から置いた方が安全。ただし説明書とにらめっこして都合の悪い部分は細かいパーツを先に付けた方が良い箇所もあります。艦橋を載せる前にその真下にあるステップ(階段)とか、船体側面のバルジを付けるまえにパラベーンを先に、等々・・・


前マスト上部などは三脚の後ろ脚で回転方向にテンションが掛かっちゃって接着が固まるまでマスト上部が傾いたり横向いたりでこういうところはフジミのキットらしいのですが、幸い酷いスペクタクルなどは無く比較的スムーズに組み進められるハズです。


パーツを全て載せ終えたところ。




エナメルフラットブラック、ジャーマングレー、フラットブラウンでスミ入れとウォッシングをして完成。



甲板上に多量に物が置かれている印象が強い艦です。



乾舷も5500t型としては低く、横からの見た目は上からに較べるとおとなしい印象。


各部を観察。元は普通の球磨型軽巡洋艦なので前方に尖った三角柱上の艦橋の前には50口径三年式14cm単装砲塔が2つ、艦橋の左右に1基ずつあったものが回天搭載母艦への改装時に全て撤去されて艦橋前方に40口径八九式12.7cm連装高角砲が1基、艦橋前の台と艦橋左右の甲板に九六式25mm三連装機銃が計4基、同単装機銃が艦首と艦橋左右と艦橋後方に7挺置かれています。


艦中央部。甲板は艦橋後方の魚雷発射管のあるウェルデッキで一旦低くなった後は後方のセルター甲板までずっと高い位置にありましたが、ウェルデッキは埋められて3番煙突の左右辺りから後方は甲板が低くなっています。重雷装艦への改装時に船体左右のバルジの前端位置からが低くなっており、その後ろに左右で計10基もの61cm4連装魚雷発射管が並んでいましたが、高速輸送艦への改装時から徐々に撤去されて最終的には全て撤去されました。回天搭載母艦への改装時にその前に雷撃により損傷していたタービンを1基撤去したため速力が36ノットから23ノットに低下しています。


艦後半。高速輸送艦への改装時に艦尾まで繋がる2条のレールが敷かれ、14m特型運荷船(大発動艇)4艘が搭載されました。艦尾で甲板は水面に向けてスロープが設けられており、大発に荷物や人員を搭載したまま発進させる事ができました。回天搭載母艦への改装ではこのレールは回天の搭載と発進に利用され、回天は8基の搭載能力があります。回天は九三式酸素魚雷に外筒を被せて1人乗りの操縦室を取り付けたような形状を成す、誘導魚雷の誘導を人力で行う実質的な特攻兵器です。後部マストには回天を吊り上げるためのクレーンが増設されており、その後方には12.7cm連装高角砲も設置されています。


右舷に回り艦尾。艦尾のレール間には爆雷投下軌条が2基あり、高角砲の後方にも爆雷投射機が設置されており対潜能力が持たされています。マスト上には13号電探も装備されています。


単装機銃は31挺とあるのですが、キットでは27挺しかありません。あとの4挺はどこに?おまけに20年7月に27挺追加装備したとあり、58挺もどこに置いていたんだろう?


前部マスト上には13号電探と22号電探が確認できます。
ところで手前に見える搭載艇「内火艇」ですが読みは「うちびてい」だそうで、うわぁずっと「ないかてい」って呼んでたよ!と思ったら「ないかてい」でも間違いではなく、今の自衛隊では後者の読みなんだとか。旧軍でも両方の読みが混在してたらしく、何というかまぎらわしいな!


同じ球磨型軽巡洋艦の球磨と。三本煙突をはじめ艦橋の形など、面影があります。


北上も重雷装艦になるまでの20年間は他の球磨型と同じだったのですが、逆に改装前の姿を北上だとお出しされても「えっ」ってなりそうな。


中央部同士。大体何がどこにあったがが読み取れます。ただ水上機とカタパルトは戦間期に北上も載せていたのか、球磨多摩だけ載せていたのかよくわかりません。(木曽は竣工時からしばらくだけ長良型と同様の艦橋とその前の滑走台から発進させていましたが、カタパルトは装備せず航空機の搭載をやめています)


艦後半。マストの位置やまだ幅が狭いセルター甲板など、長良型と較べるよりは元の位置にあるように感じます。北上のマスト前のクレーンは千歳が水上機母艦から空母への改装時に撤去したもののようです。艦尾のスロープは下面に元の丸い艦尾の形が残っており、上面を削ったのではなく後方に延長してあるのがわかります。


12.7cm連装高角砲に換装したつながりで長良型軽巡洋艦五十鈴と。五十鈴は防空巡洋艦への改装で14cm単装砲を全撤去して12.7cm連装高角砲を3基装備しています。


上から五十鈴、北上、球磨。


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5500t型は詳しくないと見分けがつかない似たり寄ったりの外見の割には、ちょっと詳しくなってくるとかなり特徴的に違う事が分かってくるので面白いのと、1/700だと大きすぎず小さすぎず程よいサイズなので組むのも集めるのも楽しいです。あとは何だろ、発売されてる中だと大井、阿武隈・・・木曽も捨てがたい。
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